先日、某キー局の担当者が挨拶に来たので、テレビ業界に危機感を募らせていた僕は、これからのテレビ業界について尋ねみた。
現在、ネットで動画を視聴することは拡大しており、今までのテレビ局のビジネスモデルが成り立たなくなるのではないかと、彼はテレビ業界の前途を危惧していた。
そもそもテレビ局は免許制で国から電波を借り番組を放送している。国は将来、テレビ局が使用している地上波の電波を車の自動運転やスマートシティに活用したいようで、国から地上波をネットでも配信するよう要請が来ているそうだ。そして地上波のネット配信が定着した頃にテレビ局に貸していた電波を国は剥ぎ取ることになると言う。
ネットでテレビの地上波を配信することになると、テレビ局は巨大企業になったネットフリックスやアマゾンなどと真っ向から戦うことになるのだが、驚いたことにネットフリックスの制作費は日本の民放キー局5局の制作費を全て合わせた金額よりも大きく、キー局の制作する番組の質で勝ち目はないそうだ。
またキー局がネットで同時配信すると、全国でキー局の放送を終日視聴することができるのでローカル局のニーズは著しく低下してしまうことに繋がる。
広告収入から考えると、ネットでテレビ番組を視聴するために視聴者に初期登録をさせることでテレビ局は視聴者の属性を把握し、視聴番組から視聴者の趣味嗜好が分かり、それぞれの視聴者に合わせて広告を配信することが可能になると言う。しかし今の広告料金のように視聴率から弾かれたざっくりした金額ではなく、視聴者の単価に視聴者数を掛け合わせた明朗会計になり、広告収入は大きく減ってしまうそうだ。
現在のテレビ局は斜陽産業に移行してきており、後10年も持たないのではないかと彼は頭を抱えていた。そして転職するべきか本気で悩んでいた。
今までのビジネスモデルが大きく破壊され、インターネットが旧態依然のメディアを食い潰しているが、さらに数十年するとインターネットではない全く新しい技術が生まれ、現在全盛のインターネットも破壊されることになるだろう。
いずれにしても時代は常に変化しており、時代の変化に適応できない者は淘汰されていく。新聞、雑誌、ラジオそしてテレビ、今まで当たり前にあったメディアが消えていく日はそう遠くはないようだ。メディアで働いている方はいずれこう呟くだろう。
「あの頃は良かったよな~」
written by SDB-1
親父が信頼していた証券マンが挨拶もなく突然退職し、次の担当者が引継ぎのため親父に連絡をしてきた。親父は退職した証券マンを随分と信頼しており彼に色々相談しながら投資を行い、彼からの無理な相談にも付き合っていたようで、彼が挨拶もなく辞めたことにショックを受けた。そこでこの機会に株式投資を全て止めることにし、そのことを伝えるために証券会社に出掛けた。以前から高齢の親父に株の取引を勧めていた証券会社の担当者のことをお袋は良く思っておらず証券会社に文句のひとつでも言ってやろうと、お袋も同行した。
証券会社では親父とお袋は応接室に通され、次の担当者とその上長が同席した。親父は今後取引を止め所有している株の全て売却することを伝え、その後にお袋はこう切り出した。
「あなた方はこんな高齢で認知症の恐れのある人に株の売買を勧めるとは少しおかいしいんじゃないんですか?」
「えっ、認知症?そうなんですか?」
「認知症の恐れがあると医者に言われています。昨年、主人が入院した時も前任の方は病院まで電話してきて取引の話を持ち掛けるし非常識にもほどがあります!」
「入院?」
「主人は昨年転んで硬膜下出血で入院してたんです!」
「そ、そうなんですか?前任者が突然会社を辞めたので何も聞いておらず引継ぎができてなくて…。すいません。」
「前任の方は不正とか何か問題があったんではないですか?」
「それは全くないんですが。ところでご主人さまに認知症の恐れがあるのであれば、株の売買は一旦停止させていただきます。今はコンプライアンスなど会社が煩くて認知症の方に株の取引をすることは社会的にも大きな問題になっているんです。だから当社では高齢で認知症の方には取引を停止させていただいております。」
「停止?」
「何も聞かなければよかったのですが聞いてしまった以上、保有の株式を売却されるのであれば、親族の方に後見人になって頂き、その方と相談の上、法的に処理をしなければなりません」
「…」
親父とお袋は墓穴を掘ってしまった。
その日、お袋から連絡があり証券会社に僕が改めて会いに行く羽目に。
証券会社で親父が医者からは認知症の恐れがあると言われただけで、その診断は出ていないことを僕は担当者に説明した。その結果、親父と担当者が再度面談し、親父の会話や思考が正常なのか判断したうえで本社に判断を仰ぐことになった。
「だいたいそんな歳になって、株の売買なんかするけんやろ?」
僕が親父に言うと、親父はしょぼくれていた。
「あんたが頼りやけん!」
母がそう言うので僕が今後処理することになり、証券会社に連絡し親父の取引履歴を郵送してもらった。そして親父の取引履歴を見て驚いた。
「えっ、こんな金額を売買しよったったい(笑)塩漬けしてもいいやんか…」
アメリカの投資家バフェットじゃないんだから、75歳までに投資は終わらせるべきだろう。
written by 彦之丞
僕のゴールデンウィークは仕事の都合で、前半6連休と後半3連休の9日間の休みだった。ゴールデンウィーク前半は購入したテレビが納品され、テレビ台を組み立てテレビの設定を行った。その後は新しい時代を迎えるため、部屋の片付けと車を洗車し実家に戻った。実家では庭の草取りで汗を掻きギックリ腰寸前まで働いた。前半の6連休は仕事をしている方が楽に思えるほど慌しくのんびりとする時間はなかった。
後半の3連休は連休初日に納品されたテレビを弄ってみた。最近のテレビは随分と進化しており、リモコンに向かって話しかけるだけでチャンネルを変えることができ、しかもユーチューブやグーグルなどはテレビに内蔵されているので、テレビをWi-Fiに接続するだけでネット動画を直ぐに検索し視聴することもできる。
また4K対応のテレビなので画質は鮮やかだ。地上波では4K放送は行われていないが、ネットには4Kの動画はたくさんアップされており、さらにネットフリックスやユーネクストなど有料のネット動画配信サービスがあるので、好みの映画やドラマを簡単に綺麗な画質で楽しむことができる。以前はレンタルショップにわざわざ出掛け見たいDVDを借りていたが、今はテレビのリモコンひとつでそれが可能だ。僕は地上波の番組を見る気がしなくなった。
ところで広告業界ではテレビの視聴層をF1、M1(女性、男性20~34歳)、F2、M2(女性、男性35歳~49歳)、F3、M3(女性、男性50歳~64歳)でターゲットをセグメントしている。最近は高齢者が増えたこともありF4、M4(女性、男性65歳~79歳)までターゲットは広げられた。しかしネットに慣れ親しんでいる世代は能動的にネット動画を楽しんでおり、実際、テレビ番組を楽しんでいる方はネットにあまり触れたことのない60歳以上のF4、M4の方だろう。某調査会社が提供するテレビの視聴率は現実とはギャップがあり、その視聴率を鵜呑みにしている広告主は高額な広告費を支払い多くの高齢者に向けてCMを流していることになる。
僕の働く広告業界は未だに地上波のテレビ広告が主流で大きく依存している。しかし秋の増税前の駆け込みと、来年のオリンピック開催に向けて4Kテレビは一気に普及し、テレビでテレビ番組を楽しむよりテレビでネット動画を楽しむ世帯が一気に増えるだろう。その結果、広告業界やテレビ業界では大きなパラダイムシフトが起きることになる。
そんなことを考えながら長い休みはあっと言う間に終わっってしまった。
「今週末の休みはテレビでゆっくり映画を楽しもう!」
written by マックス