海戦で撃沈された戦艦から海に投げ出された水兵の記録を読むと、夜の海を漂っていることが何よりも怖かったという。月も星も出ていない夜の海は暗闇で周りの状況は全く見えず、海中にはサメがいるのではないかと一晩中怯えて過ごしたという。
人は目が効かず周りが見えないと恐怖を感じるが、未来が見えない状況でも同じ気持ちを抱いてしまう。
数年前に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書によって「老後の30年間で約2,000万円が不足する」と発表され、国内では波紋が広がった。報告書には以下の一文があった。
「収入と支出の差である不足額5万円が毎月発生する場合は、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の資産の取り崩しが必要になる」
これは平成29年(2017年)の家計調査(家計収支編)における高齢無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の平均的な実収入合計は209,198円に対し、平均的な支出合計は263,717円で、収支は毎月約55,000円の赤字になることが根拠になっている。当然、この平均的な実収入には年金が含まれており、しかも日本人の寿命は延び100年時代と言われ赤字額はさらに増えることが考えられ、誰もが必ず訪れる見えない老後が心配だ。そこで早いうちから精度の高い老後の計画を立て、見えない未来を見える化することが重要だ。
まずは引退の時期までの収支を計算し、その後、90歳から100歳まで生きることを前提に未来の収支を計算しなければならない。もし引退後の収支がマイナスになるのであれば、引退の時期を延長し収入を確保しなければならない。しかし高齢になって働きたくないのであれば、現役時代にマイナスになる費用を貯めておかなければならない。
今の時代は銀行で貯金をしても利息は0に近いので、リスクの低いiDeCoやNISAなどの金融商品に投資し、さらに余裕資金があれば他の投資も検討し時間を味方につけて投資をしなければならない。そして投資したものが将来どのくらいのリターンになるのか、リスクも含め計算し計画を立てなければならない。ここで最も大切なことはアバウトに計画を立てるのではなく、高い精度で緻密に引退以降の毎月の収支を計算するべきだ。
多くの人が見えない老後を心配するが、決して投げやりになるのではなく、しっかりと現実を見つめ未来を知ることで早いうちから対策を打つことができ心配は和らぐ。
決して臭いものに蓋をしてはならない。
人生100年時代と言われるように日本は長寿社会になり、企業は70歳まで雇用することが努力目標となった。そのため日本人は随分長い時間を働かなければならい。
大学を22歳で卒業し70歳で定年退職を迎えると48年間働き、ほぼ半世紀を働くことになる。週休2日の勤務で年間の祝日を16日とし有給休暇を含めないと年間245日働き、残業を含まず1日8時間労働で年間1,960時間となる。この労働時間を48年間続けると、何と94,080時間という膨大な時間を働くことになり、通勤時間を加えると100,000時間を優に超える。
僕の働く広告業界は基本的に週休2日だが、残業や接待は多くさらに休日にイベントなどの業務を行うこともあるので、労働時間は他の業界と比べると多い。(だからと言って皆が効率良く仕事をしているわけでもなく、無駄な人員もやたらと多いが…)
ところで「石器時代の経済学」という本がある。この本によると未開社会においての労働時間は1日3、4時間程度で、しかも毎日働かないそうだ。現在、オーストラリア北部に暮らす2つの原住民グループを14日間観察したところ、1つのグループは狩猟、採集、食事の準備、武器の手入れを含め成人の労働時間は1日あたり約4時間で、2つ目のグループでは1日あたりの労働時間は約5時間だったそうだ。またベネゼエラの狩猟採集民族は狩猟採取に掛ける時間は1日2時間未満で、何と1時間の労働で1日分の食糧が調達できるという。
僕が生まれた昭和は皆、豊かさを求め、寝る間を惜しんで猛烈に働いた。当時、その時代を象徴するようなCMがあった。そのCMは栄養ドリンクのCMだったが、キャッチコピーにはこんな言葉が使われていた。
「あなたは24時間働けますか?」
今の時代にこのCMを流すと社会的に大問題になるだろうが、当時はこの考え方が当り前だった。
昨年から続く新型コロナウィルスの影響で働き方は変化し、在宅でのテレワークが普及し副業まで認める会社も増え、以前よりも自由に働くことができる時代になった。僕も今年の1月から在宅でテレワークを始めそろそろ1年になるが、通勤時間が無いうえ昼食を外で取る必要がないので、時間的にも金銭的にもゆとりが生まれた。もっと働き方を変え効率良く仕事をすることで、穏やかに生活を送れるのではないだろうか。
未開社会で暮らす原住民は現代の日本人を見てどう思うのだろうか。
「日本人は一生で100,000時間も働かないと生活できないらしいぞ!」
初冬の寒さが日本を包み、いよいよ僕の好きな冬がやって来た。冬に外出先から戻ると部屋の温もりを感じ、熱い風呂に入ると寒さで硬直した体がほぐれ幸せを感じる。また冬は食べ物がおいしい時期でたくさんの具材の入った鍋は胃袋と心を満たしてくれる。しかし愛犬Q次郎は冬が苦手のようで布団の中から出てこない。童謡「雪」に「犬は喜び庭駆けまわり猫は炬燵で丸くなる~♪」と言う歌詞があるが、屋内犬は寒さに弱いようだ。
ところで犬は人間の言葉を400ほど理解するそうだ。ドイツの実験で犬に隣の部屋に置いてある新聞を持ってくるように命令すると、10種類もの中から新聞を選び咥えて持ってくるそうだ。また隣の部屋に犬に名前を教えている9つの物と、名も知らず見たこともない物を1つ置き、その1つを持ってくるように命令すると、犬はそれを推測し咥えて持ってきたと言う。Q次郎は褒められると喜び家中を走り回るが、逆に叱ると尻尾を巻いて部屋を静かに出て行く。Q次郎も僕の言葉や言葉のトーンをしっかり理解しているようだ。
また野生の動物の多くは視線を読まれないように白目が無く黒目だけだが、人は白目があるため黒目の動きで行動が読みやすく、犬は人の黒目の動きで次の行動を予測するそうだ。僕がQ次郎を散歩に連れて行こうとリードに目をやると、Q次郎は散歩に出掛けることを察知し玄関まで走って行く。
先日、雑木林のある公園に紅葉を見に行こうとQ次郎と散歩に出掛けた。僕が散歩に出掛けるため着替えを始めると、Q次郎は散歩に出掛けることを察知し玄関先で待っている。Q次郎を抱き玄関のドアを開けると、外の寒さにQ次郎は震え散歩に行きたくないと僕の顔を舐めたが、強引に車に乗せ散歩に連れ出した。
公園に着くとQ次郎は車から出たくないと拒んだが、リードを付けると仕方なく車を降り散歩に出掛けた。Q次郎は余程寒かったようで駆け足で散歩をしていたが、僕が散歩を終え家に帰ることを察知するとQ次郎は車へ駆け出した。Q次郎は車に乗り込むと僕の膝の上に座り嬉しそうに僕を見つめる。
犬は人を癒す力があるそうで、人と犬は触れ合うことでお互いの脳の中で「オキシトシン」というホルモンが分泌される。この「オキシトシン」には心を癒し体の痛みを和らげる働きがあり、人が犬と触れ合うことで分泌される「オキシトシン」の量は通常の3倍に増加するそうだ。これまで「オキシトシン」は同じ動物同士が見つめ合ったり、触れ合ったりすることで分泌されると考えられていたが、人と犬は違う生き物でありながらお互いこのホルモンを分泌しお互いの絆を深めている。
「さぁ、Q次郎、暖かい家に帰ろう!」








