人生100年時代と言われるように日本は長寿社会になり、企業は70歳まで雇用することが努力目標となった。そのため日本人は随分長い時間を働かなければならい。
大学を22歳で卒業し70歳で定年退職を迎えると48年間働き、ほぼ半世紀を働くことになる。週休2日の勤務で年間の祝日を16日とし有給休暇を含めないと年間245日働き、残業を含まず1日8時間労働で年間1,960時間となる。この労働時間を48年間続けると、何と94,080時間という膨大な時間を働くことになり、通勤時間を加えると100,000時間を優に超える。
僕の働く広告業界は基本的に週休2日だが、残業や接待は多くさらに休日にイベントなどの業務を行うこともあるので、労働時間は他の業界と比べると多い。(だからと言って皆が効率良く仕事をしているわけでもなく、無駄な人員もやたらと多いが…)
ところで「石器時代の経済学」という本がある。この本によると未開社会においての労働時間は1日3、4時間程度で、しかも毎日働かないそうだ。現在、オーストラリア北部に暮らす2つの原住民グループを14日間観察したところ、1つのグループは狩猟、採集、食事の準備、武器の手入れを含め成人の労働時間は1日あたり約4時間で、2つ目のグループでは1日あたりの労働時間は約5時間だったそうだ。またベネゼエラの狩猟採集民族は狩猟採取に掛ける時間は1日2時間未満で、何と1時間の労働で1日分の食糧が調達できるという。
僕が生まれた昭和は皆、豊かさを求め、寝る間を惜しんで猛烈に働いた。当時、その時代を象徴するようなCMがあった。そのCMは栄養ドリンクのCMだったが、キャッチコピーにはこんな言葉が使われていた。
「あなたは24時間働けますか?」
今の時代にこのCMを流すと社会的に大問題になるだろうが、当時はこの考え方が当り前だった。
昨年から続く新型コロナウィルスの影響で働き方は変化し、在宅でのテレワークが普及し副業まで認める会社も増え、以前よりも自由に働くことができる時代になった。僕も今年の1月から在宅でテレワークを始めそろそろ1年になるが、通勤時間が無いうえ昼食を外で取る必要がないので、時間的にも金銭的にもゆとりが生まれた。もっと働き方を変え効率良く仕事をすることで、穏やかに生活を送れるのではないだろうか。
未開社会で暮らす原住民は現代の日本人を見てどう思うのだろうか。
「日本人は一生で100,000時間も働かないと生活できないらしいぞ!」
初冬の寒さが日本を包み、いよいよ僕の好きな冬がやって来た。冬に外出先から戻ると部屋の温もりを感じ、熱い風呂に入ると寒さで硬直した体がほぐれ幸せを感じる。また冬は食べ物がおいしい時期でたくさんの具材の入った鍋は胃袋と心を満たしてくれる。しかし愛犬Q次郎は冬が苦手のようで布団の中から出てこない。童謡「雪」に「犬は喜び庭駆けまわり猫は炬燵で丸くなる~♪」と言う歌詞があるが、屋内犬は寒さに弱いようだ。
ところで犬は人間の言葉を400ほど理解するそうだ。ドイツの実験で犬に隣の部屋に置いてある新聞を持ってくるように命令すると、10種類もの中から新聞を選び咥えて持ってくるそうだ。また隣の部屋に犬に名前を教えている9つの物と、名も知らず見たこともない物を1つ置き、その1つを持ってくるように命令すると、犬はそれを推測し咥えて持ってきたと言う。Q次郎は褒められると喜び家中を走り回るが、逆に叱ると尻尾を巻いて部屋を静かに出て行く。Q次郎も僕の言葉や言葉のトーンをしっかり理解しているようだ。
また野生の動物の多くは視線を読まれないように白目が無く黒目だけだが、人は白目があるため黒目の動きで行動が読みやすく、犬は人の黒目の動きで次の行動を予測するそうだ。僕がQ次郎を散歩に連れて行こうとリードに目をやると、Q次郎は散歩に出掛けることを察知し玄関まで走って行く。
先日、雑木林のある公園に紅葉を見に行こうとQ次郎と散歩に出掛けた。僕が散歩に出掛けるため着替えを始めると、Q次郎は散歩に出掛けることを察知し玄関先で待っている。Q次郎を抱き玄関のドアを開けると、外の寒さにQ次郎は震え散歩に行きたくないと僕の顔を舐めたが、強引に車に乗せ散歩に連れ出した。
公園に着くとQ次郎は車から出たくないと拒んだが、リードを付けると仕方なく車を降り散歩に出掛けた。Q次郎は余程寒かったようで駆け足で散歩をしていたが、僕が散歩を終え家に帰ることを察知するとQ次郎は車へ駆け出した。Q次郎は車に乗り込むと僕の膝の上に座り嬉しそうに僕を見つめる。
犬は人を癒す力があるそうで、人と犬は触れ合うことでお互いの脳の中で「オキシトシン」というホルモンが分泌される。この「オキシトシン」には心を癒し体の痛みを和らげる働きがあり、人が犬と触れ合うことで分泌される「オキシトシン」の量は通常の3倍に増加するそうだ。これまで「オキシトシン」は同じ動物同士が見つめ合ったり、触れ合ったりすることで分泌されると考えられていたが、人と犬は違う生き物でありながらお互いこのホルモンを分泌しお互いの絆を深めている。
「さぁ、Q次郎、暖かい家に帰ろう!」
今でこそ僕はゴールド免許だが、若い頃はスピード違反や駐車違反それに酒気帯び運転など多くの交通違反で3度の免停処分を受け多額の罰金を支払った。3度の免停のうち2度は30日の短期の免停で、自動車教習場で1日講習を受ければ翌日から免停は解除されたが、酒気帯び運転で捕まった時は180日の長期の免停となった。180日の長期免停は自動車教習所場で3日間の講習を受け、講習最終日に行われるテストをクリアすれば免停期間は半分の90日が短縮される。僕は無事にテストをクリアし90日間の免停処分になった。
当時は田舎の実家で暮らしていたので車が無ければ随分不便だった。免許習得後は近所での買物はもちろん、車で15分ほど離れた大学の通学にも車を利用していたが、免停後は全ての移動手段が徒歩や自転車もしくは公共交通で移動しなければならず窮屈に感じられた。
しかしその窮屈な環境にも1カ月ほどすると徐々に慣れ徒歩や自転車、公共交通での移動が当り前のようになり大学に自転車で通うこともしばしば。
ところで今年7月から9月までのGDPは前の3か月と比べ実質の伸び率が年率に換算して3.0%と2期ぶりのマイナスになった。この間に出された緊急事態宣言の影響でGDPの半分以上を占める「個人消費」が落ち込んだことが主な要因だと言う。しかし今後は個人消費の回復傾向が見込まれ、日本経済は回復基調だと楽観的な見方が優勢だ。
コロナ禍以前、僕は毎日事務所に出社し週に2度ほど取引先の方などと会食をしていたが、コロナウィルスの流行で昨年の3月以降、在宅勤務で殆ど外食もしていない。こんなに長く巣ごもり生活をしていると、当初は窮屈に思えていたがいつの間にか巣ごもり生活に順応し、今の生活が当然のように感じられる。逆に以前のように外出することが億劫にも感じ外食費用すらもったいないとまで思ってしまう。
人は環境が著しく変化しても時間とともにその環境にも慣れ、その環境が自然に感じられる順応性を持っている。新型コロナウィルスの影響で自由で当たり前だった生活は窮屈な生活へと大きく変化したが、今ではコロナ禍の巣ごもり生活が当り前になった人も多い。果たして直ぐにコロナ以前の生活にスムーズに戻ることはできるのだろうか?
新型コロナウィルスで失った個人消費の回復には失った時間と同じだけの時間が必要で景気回復にはまだまだ時間が掛るのではないだろうか。