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2022年04月15日

ホテルのランチバイキングに出掛けると、まるで気合を入れたようにトレーに沢山の皿を並べ、何度も席を立ち、全種類の料理を運んで平らげる人を見かける。しかも食後には全てのデザートまで運んで来るので驚いてしまう。僕も若い頃は腹一杯になるまで食べていたが、今では気に入った料理を少量だけ皿に盛る程度だ。彼等はそんなにお腹が空いているのだろうか?

家の近所の店で買い物を終えレジに並んでいると、支払いをする客が財布の中を何やら探している。後ろから様子を見ていると、財布には沢山のポイントカードが入っており、その中から店のポイントカードを探している。そしてついにレジ台に沢山のポイントカードを広げ店員と一緒にポイントカードを探し始めた。そんなにポイントが大切なのだろうか?レジで待つ他の客のことは気にならないのだろうか?

バイキングで全種類の食べ物を平らげる人やレジでポイントカードを必死に探す人は「得」、すなわち「利益」を追求しているのだろうか?僕は「利益」よりも「損失」を出したくないのではないかと考えている。
前者は食べ損なうことでの「損失」で、後者は貯め損なうことでの「損失」だ。人は「利益」よりも「損失」を出すことに過敏に反応し、損失回避行動を取ってしまう。これは行動経済学のプロスペクト理論で証明されている。

先日、日用品を購入するため足腰の弱くなったお袋をドラッグストアに連れて行った。店に入ると、お袋はカートを押しながら店内を隈なく歩き、必要な商品以外にも衝動買いをしてしまいカートは商品で溢れた。
ようやく買物を済ませレジに向かうと、店員からポイントカードの有無を尋ねられお袋は、僕に財布を渡しポイントカードを探してくれと言う。渡された財布を覗くと、沢山のポイントカードが入っており直ぐには見つからない。僕は後ろに並ぶ客が気になり、結局、レジ台に沢山のポイントカードを広げ、お袋と一緒に探した。
やっとの思いでレジを通過し、僕はお袋に聞いた。
「お袋!ポイントを貯めんといかんとね?何人も客が並んどるとに気にならんと?」
「ポイントカードを持っとるとに、ポイントば貯めんと損した気になろうが」
「やっぱり損失回避や…」


2022年04月08日

「窓からタバコの煙が入って来るのでベランダ等での喫煙は注意して下さい」と、以前、マンション1階の掲示板に張り紙があり、煙草を吸う僕は肩身が狭い思いをした。

先日、玄関のチャイムが鳴った。チャイムはマンション1階入口のオートロックの音ではなかったので、同じマンションの住人が訪ねてきたと思い玄関ドアの覗き穴を覗くと、ひとりの女性が立っていた。
「突然すみません。上の部屋の者なんですが…」
彼女は僕の上に住む6階の住人で、僕はてっきり煙草の煙によるクレームかと思い、一瞬ドキッとしながらドアを開けた。
「あの…、実はうちの猫がいなくなって、ベランダから落ちたのではないかと思い1階を探しても見当たらないんで、お宅のベランダに落ちたのではないかと思って…」
「猫ですか?」
「はい。まだ生まれて半年の子猫なんです。日頃からベランダには出さないように注意しているんですが…。申し訳ありませんが、ベランダにうちの猫がいないか確認してもらえませんか?」
遠慮する彼女を僕は家に上げベランダに案内し一緒に子猫を探した。ベランダにはお袋の家庭菜園のプランター、鉢植えの植物、それにテーブルと椅子があり、二人で「にゃ~、にゃ~」と声を出し隈なく子猫を探したが、子猫は見つからない。
「上のベランダからこのベランダに上手く下りれますかね?うちは犬がいるので、ベランダで物音がすると吠えるはずなんですけど…。きっと1階に落ちたんじゃないですか?もう一度一緒に1階を探しましょう!」
彼女は藁にも縋るような顔で頷いた。
彼女と一緒にエレベーターで1階に降りると、直ぐに彼女の携帯電話が鳴った。
「もしもし、えっ!?居た!?本当!?あ~良かった!!」
彼女の家族が家中を探すと押入れの奥に子猫はいたようで、彼女は胸を撫で下ろした。
「どうも、ありがとうございます。大変、お騒がせしました」
「良かったです!安心しましたよ!」
彼女は何度も僕に頭を下げた。

1時間ほど経ち、また玄関のチャイムが鳴った。
「えっ、今度こそクレームか?」
玄関を開けると、先ほどの女性がお礼にとお菓子の差し入れを持って来てくれた。

「こんなに肩身の狭い思いをするくらいなら、禁煙せんといかんな…」


2022年04月01日

桜が満開になり、外に出掛けるとつい顔を上げてゆっくり歩いてしまう。いよいよ4月に入り入社式や入学式が行われ、多くの若者たちが新生活を始め、また多くの人が新しいことにチャレンジする季節だ。

昨年の4月より体が訛らないようにと、スポーツクラブに入会し週3日のトレーニングを始めて1年になる。スポーツクラブに通い始めた頃は、新鮮で勢いもあり自分を追い込みながらトレーニングをしていたが、半年ほど過ぎると倦怠期を迎えトレーニングに苦痛を感じ、トレーニングを行う目的を自問自答していた。しかし今では倦怠期を乗り越えトレーニングが自分の日課になり以前より苦痛を感じなくなった。
トレーニングを始める前は筋肉も落ちお腹には脂肪が付きポッコリとしていたが、今ではお腹は細くなりベルトの穴を以前より締めなければズボンがずり落ちてしまう。また脚や腕も一回り大きくなり胸もボリュームが出てきた。

先月、愛犬の毛をベランダでカットしている時に腰を痛め馴染みの整骨院で治療を受け、先生からトレーニングを2週間控えるように言われた。ようやく腰の痛みも治り再びスポーツクラブに通い始めたが、今まで持ち上げていたトレーニングの負荷は随分重く感じ、翌日は全身筋肉痛で疲れてしまった。筋肉を作るには長い時間が掛るが、一旦、トレーニングを止めると筋肉の落ちる速度が速いことに僕は驚いた。

「上り一日下り一時」この言葉は上るには一日掛かるが、下るときは僅かな時間しか掛からないと意味で、物事を作り上げるには多くの時間と労力を要するが、壊すのは容易いという例えだ。これはトレーニングだけではなく全てのことに当てはまる。友情、恋愛、勉強、仕事、投資…。同じ類の言葉に「ローマは一日にしてならず」という諺がある。人類史上最大で最強の繁栄を遂げたローマ帝国は築くまでに約700年もの歳月を費やし、決して短期間で完成したものではない。

新年度を迎え、多くの人が決意を固め新しいことにチャレンジするが、何事も継続しないと身に付かない。そして継続するためにはしっかりと目標を持ち、強い意志で臨み、チャレンジする中で多くの発見や楽しみを見出せないと、長く続けることはできない。
「よし。また新たしいことにチャレンジしよう!」


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