本田が試合終了直前にPKで同点ゴールを決めた。そして同点のまま試合終了のホイッスル。日本代表はワールドカップブラジル大会への切符を手にした。
試合は0対0のまま後半戦へ突入。そして後半戦36分に日本は失点してしまった。僕はテレビでその試合を観戦していたが、きっと多くの視聴者が失点した瞬間に日本代表の負けを意識したに違いない。そしてついにロスタイムに突入。それでも日本代表選手は諦めていなかった。積極的に相手ゴールに攻め込んだ。そして相手のゴール手前で本田の放ったクロスボールが相手選手のミスを誘った。
PKはシュートする側に分があるが、日本中の期待を本田は背負った。その重圧は想像もできない。あまりの重圧に自らミスシュートを蹴り出すかもしれない。しかし、あの大一番でゴールを決めきる力が本田にはあった。
決めきる、守りきる、やりきる…。この『きる』力は日々の鍛錬の中から習得されるもので、ハードな練習により身に付けた並々ならぬ技術力、幾度となく土壇場を経験した精神力から生まれてくるものなのだろう。きっとゴールを見つめながら本田は心の中で「俺ならできる」、「決める」そう心の中で呟いていたはずだ。
最後まで諦めずに、ここ一番の土壇場で決めきる力が多くの人に感動を与えることができる。そして来年行われるワールドカップでもたくさんの感動を見せてくれるだろう。
written by 彦之丞(ひこのじょう)
脳の片隅に追いやられている記憶がふとしたことで目を覚ますことがある。梅雨空を見上げた時に、苦しかった頃の記憶が目を覚ました。その記憶は梅雨の時期のものではなかったが苦い記憶だったので、どんよりとした曇り空を見て目を覚ましたのだろう。
記憶を呼び覚ますものは視覚からだけではなく、聴覚や嗅覚、更には味覚、触覚と五感の全ての感覚からの情報で呼び覚ますことができる。ある音楽を聴くと必ず思い出す風景がある。町ですれ違った女性の髪から流れきたシャンプーの香りから、大学の教室を思い出したこともある。そしてジェリービーンズを食べると必ず思い出す記憶がある…。そして、ひんやりしたタオルケットを触った瞬間に、子供の頃にエアコンの利いた部屋を思い出す。当時は今のようにエアコンが普及しておらず、我が家に初めてきたクーラーは家族で寝ていた部屋だけに設置されていた。
先日、行きつけの床屋で顔を剃ってもらっているときチクリとした。剃刀がほんの少し僕の顔を傷つけた。たまにある床屋さんのちょっとした失敗。そのことである記憶が目を覚ました。子供の頃、ピアノの発表会の前夜にこっそり父の真似をしてT字の剃刀で鼻の下の産毛を剃ったことがある。初めてのことだったので見様見真似で剃刀を顔で滑らせた。結局、翌日の発表会には鼻の下に絆創膏を貼って出ることになった。
広告の世界は記憶されることを目的に視覚と聴覚の2つの感覚に情報を発信している。しかし3つの感覚がまだ残されており、この領域での広告手法は未だ確立されていない。
ハッとした!そう言えば犬は良く鼻を使って匂っている!犬を観察してアイデアを絞ってみよう。そう思った。
written by ダニエル
東京から大切なお取引先の方が久しぶりに来福され、昼下がりの時間から一杯やることになり、行きつけの老舗料亭へ。部屋に通され障子を開けると縁側があり、そこから緑に覆われた庭が見える。その奥に光で水面が煌く川が流れている。都会の喧騒を忘れさせる福岡を代表する名料亭だ。料亭を利用する多くのお客さんは懐石料理のコースを頂くのだが、中途半端な時間だとコースを頼まずにお任せの一品料理で一杯やれるところが気に入っている。
窓から五月の心地良い風を感じながら3人には広すぎる畳の間で、酒の肴を摘みながら裃を脱いでゆっくりと一杯やる。まさに至福の時間だ。時間が経過するごとに仕事に厳しい顔が穏やかな顔に戻っていく。そして酒が進むと少しずつ声も大きくなり会話が盛り上がる。20年近く付き合っているにも関わらず良く話が尽きないものだ。頃合を見て料亭の女将が部屋に挨拶に来て、また場が盛り上がる。
現代はパソコンや通信機器が進歩し仕事の処理速度は以前に比べ随分早くなった。また食事のスタイルも随分変化(進化?)している。町にはコンビニやファーストフード店がひしめき合い食事の時間帯は多くの人がレジに並ぶ。要するに生活の速度が以前より増しているのである。そんなに生活の速度を上げて人間はどこへ向かっているのだろうか?ふと、そう思った。
きっと生活の速度が増すことで現代人は多くのものを見過ごしてしまい、新しいアイデアやヒントを発見することはできなくなっているのだろう。それより季節や自然を感じ、旬の味覚を味わいながら、裃を脱いで人と触れ合う。そして人間の持つ全ての感覚(五感)を刺激するほうが多くのものが見えてくるし、遥かにアイデアやヒントは生まれてくるだろう。
五感を刺激しないとその先にある第六感は養うことはできないはずだから。
written by マックス