以前、共同で会社を経営しているとき、稼ぎの少ない人間がボーナスを受け取ることを拒んだ。自分は稼ぎが少ないのでボーナスは要らないと言う。そこまでは潔く格好良いのだが、僕が皆でボーナスをもらうべきだと主張すると、結局その人間は渋い顔をしながらもボーナスを受け取った。
だったら最初から気持ち良くボーナスを受け取り、これからは稼いでくるからと言った方が格好良いものを…。全く気概がない。
またこの人間とは逆に、最初から自分は多くの金額を受け取る権利を主張する人間もいた。ろくに結果も出してもないのに自分の立場や自分の頑張りを主張し、何としても自分の欲しい金額を受けとろうとする人間だ。それはそれで情けなくなってしまう。
人は目の前に金銭を提示されると、なかなかそれを断わる事ができず、欲望に負けてしまうのだろう。今の時代、潔い武士のような人間が減っているように感じる。逆に今の時代には武士のような人間は必要ないのかもしれない。またこの時代に本物の武士がいても驚いてしまう(笑)
以前、僕も何度か目の前に金銭を用意された事がある。その時、僕は生唾を飲み込んで自分の欲求をグッと押さえ潔く断わり、そして二言は無かった。僕は格好を良く見せるつもりではなく、プライドと男が廃れることにこだわった。このことで、金銭を用意した方はその時の僕の態度を買ってくれて、今でも僕を信用し深いお付き合いをさせていただいている。
人間は欲の塊のような生き物で、自らの欲求を満たす物を目の前にすると断る事ができない。しかしそのときの潔い態度で人間の本質がしっかりと見えてくる。本音と建前を使い分けず人間としてプライドを持ち人間が廃れないように生きるべきではないだろうか。
written by 彦之丞
東京の一人暮らしの叔母が高齢になり認知症を発症してしまったので、福岡に連れ戻し一緒に暮らすことになった。
叔母は既に福岡に戻っているが、叔母の荷物をまとめて送り出すために僕の出張に合わせて両親も一緒に東京に向かった。
両親も高齢で余り動けないので、両親の指示のもと僕が荷物をまとめた。
叔母は一人暮らしだったが、荷物の量はかなりあったので荷造りは大変だった。
東京では両親を一流ホテルに泊め、食事をご馳走した。両親はホテルの宿泊費や飲食費を聞いて驚いていた。
父は「もったいない、もったいない」と口にしていたが、母は大喜びで楽しんでいた。
叔母の荷物を引っ越し業者に引き渡し、帰りの空港で母は知人やご近所さんへのお土産を購入するために一人走り回っていた。
「お袋、叔母さんの引越しのために東京に来たんやろ?お土産はいらんやろ!」
「お土産を選ぶのも楽しいと!」
「だいたいお袋は東京に何しに来たとね?」
「おばちゃんの引っ越しやろ!」
結局、その大量のお土産を僕が持つことになる。
父は厳しく贅沢をせず外出もあまりしない人だが、母は逆に外に出掛けることが大好きで、今回の東京も楽しみにしていたようだ。
母は叔母の荷物をまとめるという目的より、僕と東京見物をする事が目的だったのだろう。
両親の歩く速度は随分と遅くなり歩くこともおぼつかないが、それでも二人手を取って歩いていた。
本来の目的とは違うが、両親を小旅行に連れて行く事ができて良かった。
両親ともに先はそう長くないだろうから、生きていられるうちに今まで経験した事を少しでも多くさせてあげようと思った。
written by マックス
ゴールデンウィークの間、ある本を読んで考え方が大きく変化した。
本の内容は「今」をしっかりと生きることを説いており、過去や未来を余りに多く思考すると、今現在に起きてもいないことまで思考し、恐怖や不安を感じネガティブな思考が自らをコントロールしてしまう。その結果、真の自分ではいられないという。だから思考することよりも真の自分を意識することが大切だと説いている。
真の自分を意識することで真の自分を感じ、肉体と真の自分が合致し、穏やかに自然体で生きることができるそうだ。
また時間はこの世には存在せず、時間は人間が作り出したルールで、未来も過去も虚像で、実は今現在しか存在しないという。「現在」と言う言葉は現実に今在ることを指している。しかし現代人の多くは時間に追われ、また未来と過去をいつも計り未来と過去という虚像に振り回され、「今」、「現在」に集中できていないそうだ。
「今」、「現在」を意識することや、今そこに流れる風、季節の香り、自然の音などを五感で感じ意識することで人間は「今」、「現在」を豊かに生きることができるという。
僕はこの本に触れ、衝撃を受けるとともに、この考え方が素直に腑に落ちた。人間は起きてもいない事ことに心配や不安を感じ、頭の中では常にそのことへの思考が巡っている。また現代は多くの情報に晒され、常にその多くの情報への思考も働いており、自らを意識することを失っている。そのため、現在と真の自分を意識する事もできないのだろう。このことは何と不幸なことではないかと感じてしまった。
「Don’t think. feel!」
ブルース・リーがカンフー映画「燃えよドラゴン」でこう言っていた。
カンフーは古来より中国の寺の僧侶が護身術としていた武道だが、仏の道に人間の真意があるのかもしれない。
written by キムジー