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2022年04月22日

福岡市中心部にある大濠公園の近くに、毎日、開店前から行列のできるパスタ店がある。僕は愛犬の散歩で良くその店の前を通るが、散歩を終えて帰る頃にも同じ客が並んでいるので、待ち時間は優に1時間を超える。長い時間並んで食べるほど価値のあるパスタなのだろうか?僕は並ぶ時間を自分の時給に換算し店の価格に加算して考えるので、並ぶ店の料理は随分高いと感じてしまう。そのため僕は行列のできる店には入らない。ちなみに「行列のできる相談所」というテレビ番組があるが、そんな相談所にも僕は決して行かないだろう。(しかもこの番組を見る気にすらならない)

ところで今の時代は待つことをしない。いつでも誰とでも携帯電話やネットで繋がっており、コンビニは24時間年中無休、アマゾンなどの通信販売をネットで利用すると、翌日には注文した商品が自宅に届き、しかも飲食店の料理もネットで注文すると直ぐに配達され、あっという間に温かい料理が目の前に並ぶ。
以前は電車やバスに乗るにも時刻表を持っていなければ駅や停留場で電車やバスを待つことは多かったが、今はスマホで直ぐに時刻表や到着時間を確認することができ、電車やバスを待つことはほぼ無くなった。またスマホや携帯電話の普及により公衆電話の前で順番待ちをする行列も見なくなった。(今も公衆電話は設置されているそうだが、ここ数年僕は公衆電話を見たことが無い)
待つことをしない時代になり毎日の生活が慌しくなったように思える。そのためスーパーやコンビニのレジで少しの時間並ぶだけでも人はイライラしてしまい、信号待ちの車で信号が青に変わってモタモタしていると、後ろからクラクションが鳴らされる。
便利になったことで待つことが社会の中から排除され、人は我慢することや寛容な気持ちを失い、同時にときめきまで失ってしまったのかもしれない。
子供の頃はクリスマスや正月などの楽しい行事を指折り数えて待った。好きな子にラブレターを書き返事をドキドキしながら待った。そしてデートの日をときめきながら待った。
行列のできるパスタ店に並んで待っている客は、失ってしまったときめきを取り戻そうとしているのかもしれない…。

現代人とは異なり犬はちゃんと待つことができる。忠犬ハチ公は渋谷駅で主人の帰りを待ち、愛犬Q次郎は「待て!」と言われると、目の前に置かれたおやつを必死に我慢して待っている。人も以前のように待つことをしても良いのかもしれない。

来週、待ちに待ったゴールデンウィークが始まりブログの更新は2週お休み。皆さん、くれぐれもコロナウィルスには気を付けて素敵なゴールデンウィークをお過ごしください!

2022年04月15日

ホテルのランチバイキングに出掛けると、まるで気合を入れたようにトレーに沢山の皿を並べ、何度も席を立ち、全種類の料理を運んで平らげる人を見かける。しかも食後には全てのデザートまで運んで来るので驚いてしまう。僕も若い頃は腹一杯になるまで食べていたが、今では気に入った料理を少量だけ皿に盛る程度だ。彼等はそんなにお腹が空いているのだろうか?

家の近所の店で買い物を終えレジに並んでいると、支払いをする客が財布の中を何やら探している。後ろから様子を見ていると、財布には沢山のポイントカードが入っており、その中から店のポイントカードを探している。そしてついにレジ台に沢山のポイントカードを広げ店員と一緒にポイントカードを探し始めた。そんなにポイントが大切なのだろうか?レジで待つ他の客のことは気にならないのだろうか?

バイキングで全種類の食べ物を平らげる人やレジでポイントカードを必死に探す人は「得」、すなわち「利益」を追求しているのだろうか?僕は「利益」よりも「損失」を出したくないのではないかと考えている。
前者は食べ損なうことでの「損失」で、後者は貯め損なうことでの「損失」だ。人は「利益」よりも「損失」を出すことに過敏に反応し、損失回避行動を取ってしまう。これは行動経済学のプロスペクト理論で証明されている。

先日、日用品を購入するため足腰の弱くなったお袋をドラッグストアに連れて行った。店に入ると、お袋はカートを押しながら店内を隈なく歩き、必要な商品以外にも衝動買いをしてしまいカートは商品で溢れた。
ようやく買物を済ませレジに向かうと、店員からポイントカードの有無を尋ねられお袋は、僕に財布を渡しポイントカードを探してくれと言う。渡された財布を覗くと、沢山のポイントカードが入っており直ぐには見つからない。僕は後ろに並ぶ客が気になり、結局、レジ台に沢山のポイントカードを広げ、お袋と一緒に探した。
やっとの思いでレジを通過し、僕はお袋に聞いた。
「お袋!ポイントを貯めんといかんとね?何人も客が並んどるとに気にならんと?」
「ポイントカードを持っとるとに、ポイントば貯めんと損した気になろうが」
「やっぱり損失回避や…」

2022年04月08日

「窓からタバコの煙が入って来るのでベランダ等での喫煙は注意して下さい」と、以前、マンション1階の掲示板に張り紙があり、煙草を吸う僕は肩身が狭い思いをした。

先日、玄関のチャイムが鳴った。チャイムはマンション1階入口のオートロックの音ではなかったので、同じマンションの住人が訪ねてきたと思い玄関ドアの覗き穴を覗くと、ひとりの女性が立っていた。
「突然すみません。上の部屋の者なんですが…」
彼女は僕の上に住む6階の住人で、僕はてっきり煙草の煙によるクレームかと思い、一瞬ドキッとしながらドアを開けた。
「あの…、実はうちの猫がいなくなって、ベランダから落ちたのではないかと思い1階を探しても見当たらないんで、お宅のベランダに落ちたのではないかと思って…」
「猫ですか?」
「はい。まだ生まれて半年の子猫なんです。日頃からベランダには出さないように注意しているんですが…。申し訳ありませんが、ベランダにうちの猫がいないか確認してもらえませんか?」
遠慮する彼女を僕は家に上げベランダに案内し一緒に子猫を探した。ベランダにはお袋の家庭菜園のプランター、鉢植えの植物、それにテーブルと椅子があり、二人で「にゃ~、にゃ~」と声を出し隈なく子猫を探したが、子猫は見つからない。
「上のベランダからこのベランダに上手く下りれますかね?うちは犬がいるので、ベランダで物音がすると吠えるはずなんですけど…。きっと1階に落ちたんじゃないですか?もう一度一緒に1階を探しましょう!」
彼女は藁にも縋るような顔で頷いた。
彼女と一緒にエレベーターで1階に降りると、直ぐに彼女の携帯電話が鳴った。
「もしもし、えっ!?居た!?本当!?あ~良かった!!」
彼女の家族が家中を探すと押入れの奥に子猫はいたようで、彼女は胸を撫で下ろした。
「どうも、ありがとうございます。大変、お騒がせしました」
「良かったです!安心しましたよ!」
彼女は何度も僕に頭を下げた。

1時間ほど経ち、また玄関のチャイムが鳴った。
「えっ、今度こそクレームか?」
玄関を開けると、先ほどの女性がお礼にとお菓子の差し入れを持って来てくれた。

「こんなに肩身の狭い思いをするくらいなら、禁煙せんといかんな…」

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