先日、相談があると後輩からランチに誘われた。彼の相談は今の給料ではこの先が不安でどうすればよいだろうか、というものだった。とりあえず、転職や独立も含め考えてみるように彼にアドバイスした。また少額でできる投資などもあるので、今のうちから少額でよいので活用することも薦めた。
「生活に余裕はないやろうけど、iDeCoやNISAなども検討したらどうや?」
僕が彼にそう言うと、
「iDeCo、NISA…?一体それは何ですか?」
僕は呆気にとられ、日々の暮らしの中で新聞や本を読むことを彼に薦めた。先日も僕の妹夫婦に同じアドバイスをしたが、彼らもiDeCoやNISAのことを知らなかった。
今の日本は夫婦共働きの家庭が多く、夫婦共に日々の仕事と家事に忙殺されているようで、それ以外のことを考える余裕は無く、投資の一般常識ですら知らない。これから少子高齢化で社会保障費が膨れ上がり、年金や医療費が大きく見直されることが予想されるのに、多くの人が目先の生活が大変で将来のことを考えていないようだ。
今月に入り、僕は将来の自分の生活費を試算してみたが、意外に費用が嵩むので驚いた。当然、年金などに頼らいないことを前提に試算したので、今のうちから手を打っておかなければ将来、貧乏老人になってしまう。
2040年に高齢者の人口がピークを迎え、周りを見渡すと3人に1人が高齢者ということになる。草野球チームに例えると、外野の3人は高齢者ということになる。(内野でもいいのだが)長打を打たれると外野を守る高齢者は走ってボールに追いつけないだろう。
またママさんバレーでも3人に1人が高齢者ということになる。曲がった背中でアタックやブロックができるのだろうか。
政府は「未病」などを謳い健康長寿を推進しているが、あまり長生きすることも問題があるように思える。いずれにしても年金などに頼ることなく自分の人生を生き抜く力を早いうちから養わなければならない。
僕はランチの帰りに後輩に聞いた。
「お前、定年後どうやって生活するとや?」
「セブン、ローソン、ファミマ、コンビニ3軒で掛け持ちバイトでしょうね!」
彼は笑いながらこう返してきたので、僕は、
「その頃はコンビニも無人のレジになってバイトは無くなるぜ」
「ハハハ」
彼は笑っていた。
written by モンコ
親父が入院し毎週のように週末は見舞いに出掛けている。先日、親父の今後の治療方針について主治医から話があった。親父はパーキンソン病を患っており、また脳の周りに通常の人の倍の水が溜まっているそうだ。
人間の脳は髄液で覆われており脳は髄液の中に浮いているような状態で、髄液は脳を守るために頭の中でクッションのような役割を果たしているという。またその髄液は一定の期間で新しい髄液と全て入れ替わり、古い髄液はリンパなどを経由し体から尿などと一緒に排出されるそうだ。僕は人間の体の機能にすっかり驚いてしまった。
親父の脳の周りを覆う髄液は上手く排出されていないようで、頭の中で髄液は溜まり、その溜まった髄液が脳を圧迫し脳にダメージを与えているそうだ。その影響で親父の認知力は低下し、体を動かすことが困難になっているという。
そこで主治医は頭蓋骨に穴を開け、溜まった髄液を排出する手術を薦めた。その場に親父も同席していたが、親父は一言も喋らなかった。親父の年齢から手術による体へのダメージを考えると、躊躇してしまう。
病室に戻り、僕は親父に手術の件を確認した。
「親父、手術するや?」
僕がそう聞くと親父は、
「頭にドリルで穴ば開けるて簡単に言うばってん、間違えて脳にグサッと刺さったらどうするとや?」
親父はボソッと言った。
「頭に穴を開ける手術は毎週のこの病院で行われよるらしいけん、先生は慣れとうよ。それに麻酔は全身麻酔やないし、2時間くらいの手術やけん、そげん大変な手術じゃないばい」
僕がそう言うと、親父は黙ったまま病室から見える外の景色を眺めていた。
そこで親父の誕生日も近いので、次の週末に親父を一旦自宅に連れて帰り旨いものでも食べさせ、息抜きをさせようとお袋に話した。お袋は快諾し直ぐに主治医に外出許可をもらいに行った。
「親父、週末は家に帰って寿司でも食おうや!」
僕がそう親父に言うと、親父は嬉しそうに頷いた。
僕の年齢になると親の介護などで何かと時間が制約されてしまう。今のところお袋は元気なので助かっているが、これから両親の命が尽きるまで週末は更に大変になるだろう。それでも親には長生きはしてもらいたい。
written by マックス
両親とも定年退職後は金銭的に余裕があり二人でよく旅行に出掛け、それぞれ自分の趣味を楽しみながら悠々自適に生活していたが、親の兄弟が他界し親父は元気がなくなってしまった。まるで自らの他界の時期を実感しはじめているようだ。
最近、親父は毎日の生活に覇気がなく急速に老けている。親父は数年前に癲癇になり、パーキンソン病まで患ってしまった。どちらも脳の病なので突然倒れてしまったり、動けなくなったりしてしまうので、母は親父から目が離せない。親父は食も細くなり体力は低下し、あまり動かなくなったので母が家事全般をこなしている。特に親父のトイレと入浴は大変で、夜中に親父がトイレに一人で立つと転んでしまうのではないかと、母は親父のトイレに付き添い睡眠不足の日が続いている。このままでは夫婦そろって共倒れしそうだ。
先日も夕食後に親父は床にうずくまり動けなくなったので、病院へ連れて行き検査を受けさせた。入院までは必要ないと医者は言ったが、母の疲労を考えると、親父を入院させ母を休ませないと体がもたないので、医者に頼み父を入院させることにした。
入院した親父は若い看護婦さんに格好の悪いところは見せられないと思うようで、自らトイレに行くのだが、親父が転んで骨折しては大変と、ベッドの下には重量に反応するマットが敷かれている。そのマットに親父の体重が掛かるとナースステーションでチャイムが鳴る仕掛けなので、夜中にトイレに行こうと親父がマットを踏むと、看護婦さんが直ちに駆けつける。
「トイレですか?ナースコールを押してくださいね!」
そう、看護婦さんに注意され、看護婦さんに介助され尿瓶で用を足すことになる。
「まるで監視されとるみたいやね…」
親父はまずそうな顔で看護婦さんに従うそうだ。
「親父、若い看護婦さんに下の世話をされるのは恥ずかしいやろ?」
僕がそう親父に聞いてみると、
「この歳になるとどうもないったい。お前もすぐにその歳になるよ。ハハハ」
「俺の時代はロボットがしてくれるけん、恥ずかしくないやろ」
親父を見ているとまるで明日は我が身のように感じるが、老後を元気に暮らせるためにどのように老いと向き合い、幸せに暮らすためにはどうするべきなのか、両親を観察しようと思っている。誰もが老いに勝つことはできないが、老いとちゃんと向き合い、徐々に弱りながらも心身ともに健全に生きることはできるはずだ。今週末、親父を老人施設に入居させること無く、皆に負担の掛からないようにするために、どのような暮らし方がベストなのか話し合うことにしている。
written by ダニエル