先の大戦中、多くの日本人兵士がアジアの灼熱の地で、青い空を見上げ国旗掲揚し、どれほど遠い祖国を想ったことだろう。今の時代「祖国」と言う言葉を使う日本人は減ったように思う。それだけ日本人としての誇りも希薄になっているということなのだろうか。
毎年、終戦記念日が近づくと多くのメディアが当時の記録を報じる。その記録の中で多くの兵士の手紙や遺書が紹介される。その手紙や遺書の中には「祖国」という文字が多く記されている。
多くの兵士が祖国日本のために、祖国日本の未来を信じ、自ら命を犠牲にした。その悲惨な過去の上に今があり、歴史は地層のように積み上げられていく。
しかし人類は過去の教訓を学ぶことなく同じ失敗を繰り返す。あれだけの悲惨な過去があるにも係わらず、今も世界中で戦乱の火が絶えない。
スポーツの世界大会を海外で観戦したことがある方なら、異国での国旗掲揚に立ち会ったことがあるだろう。しかし多くの方はその場面に立ち会うことはないだろう。
日本での国旗掲揚と海外での国旗掲揚では、はるかに感じるものが違う。海外での国旗掲揚に立ち会うと、自然と「祖国」を想うことができる。
先日、ボランティア活動のために出かけたカンボジアの小学校の小さなグランドで、国歌を流しての国旗掲揚が行われた。ゆっくりと、ゆっくりと日の丸が真っ青な空に昇っていく。皆、自然と姿勢を正し、日の丸の旗を凛とした視線で追う。日本人としての誇りを強く感じた。
「祖国」を愛した多くの犠牲を決して無駄にしてはならない。
written by ベルハルト
毎年7月15日の早朝に山笠のフィナーレである「追い山」が行われる。追い山が終わった静かな福岡に5日間のカンボジアでのボランティア活動を終え、ヘトヘトの身体に鞭打って僕は日本に帰国した。カンボジアは日本よりも暑く湿気も多い国だ。福岡に帰って来ると涼しく感じられた。
カンボジア滞在は短いものであったが、滞在中は全く和食を口にしていない。日本に戻るとやはり和食を口にしたくなる。そう言えば馴染みの天ぷら屋のご主人が、天ぷらは夏の食べものだと言っていたことを思い出した。天ぷらのチリチリと揚げる音が涼しく、夏は天ぷらに合う食材が多いからだそうだ。
早速、僕は天ぷら屋に出かけ、お好みで天ぷらを注文し冷えたビールも頂いた。
「旨い!」
カンボジアの町では「味の素」の文字を良く見かける。驚いたのは露店に売られていた1キロや2キロの袋に詰められた「味の素」だ。アジアで「味の素」がよく利用されていることは知っていたが、あんなに大きな袋で売られていることに驚いた。
カンボジアのガイドからこう聞かされた。
カンボジアでは今も自然の中で、自給自足の生活をする貧しい人が多くいる。
彼らが化学調味料の「味の素」を使って調理したものを口にすると、頭痛が起こり嘔吐してしまうそうだ。僕はアンチ「味の素派」で「味の素」を多く摂取すると胸焼けが起こり、胃腸の調子が悪くなる。カンボジア滞在中はずっと胃腸の調子が悪く、胃腸薬を毎日服用していた。恐らく大量に使用された「味の素」が原因だろう。
「仕込みには5時間ぐらいかかるっちゃんね」馴染みの天ぷら屋のご主人が言った。
「そげんかかると?野菜ば切るくらいやろ?」僕が尋ねると、
「何ば言いいよーと。天つゆやら味噌汁に使う出汁ば取ってくさ、米磨いだり大根おろしば擦たり、とにかく山ほどすることがあるったい。海老とかくさ、毎日200尾ほど皮ば剥きよるけん、今までに200万尾くらいの海老を捌いとろうやぁ。俺は海老にたいがい怨まれとろやー。ハハハハハ!」(…凄い)
化学調味料などを使うと簡単に美味しい料理ができあがるが、逆に簡単に自然の味が壊される。
やはり自然の食材に手間隙かけた料理は旨い。
written by ベルハルト
あるお得意先の社会貢献活動に参加するため、今年もカンボジアに出かける。その活動はカンボジアの貧しい村に小学校を建設し、現地の子供たちに無償で学びの場を提供している。そして、その小学校ではこの時期に卒業式が行われ、その卒業式に参加するためにお得意先はカンボジアへ出かける。なぜか僕も強制連行される。(笑)
カンボジアと日本の卒業式では全く景色が異なる。卒業式は燃えるような炎天下で行われ、参加する子供は半袖に半ズボン。当然、卒業式を見守る親も正装した方などおらず、普段の半袖姿だ。四季が無いカンボジアでは当然のことだろうが日本人には違和感がある。
話は変わるが、以前、あるゼネコンの海外赴任生活が長かった方からこんな話を聞いたことがある。彼はアフリカでの赴任生活が特に長かった。
彼は四季があることで、日本は豊かな文化が育ち、教育も熱心になったと言う。四季があることで、季節ごとに知恵を絞り生活を変化させなければならず、特に越冬するためには暖をとり食糧を備蓄しなければ死に至ることに繋がる。
一年中、暑い国はその気候によって死に至ることが少なく、生きるうえで知恵を絞る必要があまり無いそうだ。生活は単調で食事も毎日同じものを食べ、毎日暑いので仕事もせず昼間は日陰でゴロゴロしている。
だから四季のある日本に生まれたことは、とにかく幸せなことだと彼は言っていた。
日本には風物詩という言葉がある。夏の風物詩をあげると、直ぐに多くの単語が口に出る。
団扇、風鈴、スイカ、浴衣、うなぎ、花火、向日葵、海水浴、そうめん、蚊取り線香…。
一年中暑い国には風物詩という言葉はない。
そう言えば、カンボジアの大人もいつも日陰でゴロゴロしている。
もう直ぐ梅雨が明け、日本にも暑い季節がやってくる。
日陰でゴロゴロしたくなる気持ちもわかる気がする(笑)
written by 彦之丞