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2013年05月24日

東京から大切なお取引先の方が久しぶりに来福され、昼下がりの時間から一杯やることになり、行きつけの老舗料亭へ。部屋に通され障子を開けると縁側があり、そこから緑に覆われた庭が見える。その奥に光で水面が煌く川が流れている。都会の喧騒を忘れさせる福岡を代表する名料亭だ。料亭を利用する多くのお客さんは懐石料理のコースを頂くのだが、中途半端な時間だとコースを頼まずにお任せの一品料理で一杯やれるところが気に入っている。

窓から五月の心地良い風を感じながら3人には広すぎる畳の間で、酒の肴を摘みながら裃を脱いでゆっくりと一杯やる。まさに至福の時間だ。時間が経過するごとに仕事に厳しい顔が穏やかな顔に戻っていく。そして酒が進むと少しずつ声も大きくなり会話が盛り上がる。20年近く付き合っているにも関わらず良く話が尽きないものだ。頃合を見て料亭の女将が部屋に挨拶に来て、また場が盛り上がる。

現代はパソコンや通信機器が進歩し仕事の処理速度は以前に比べ随分早くなった。また食事のスタイルも随分変化(進化?)している。町にはコンビニやファーストフード店がひしめき合い食事の時間帯は多くの人がレジに並ぶ。要するに生活の速度が以前より増しているのである。そんなに生活の速度を上げて人間はどこへ向かっているのだろうか?ふと、そう思った。

きっと生活の速度が増すことで現代人は多くのものを見過ごしてしまい、新しいアイデアやヒントを発見することはできなくなっているのだろう。それより季節や自然を感じ、旬の味覚を味わいながら、裃を脱いで人と触れ合う。そして人間の持つ全ての感覚(五感)を刺激するほうが多くのものが見えてくるし、遥かにアイデアやヒントは生まれてくるだろう。

五感を刺激しないとその先にある第六感は養うことはできないはずだから。

written by マックス

2013年05月17日

撮影で仙台に出かけた。風は強かったが天気も良くロケのコンディションは良好。翌日の撮影本番に向けてロケ地を選ぶためロケハンを開始した。ロケの候補地は松島だったのでそこを中心にロケ地を探していたが、納得できる場所が見つからず松島から少し足を伸ばしてみた。

突然、広大な更地が広がり遠くに葉が抜け落ちた松が数本立っている。周りを見渡すと海水によってできたものだろうか、まるで湿原地のように所々に水面が広がり、その傍に壁が抜けた家が複数見える。そこは津波に襲われた土地だった。2年前にテレビなどで生々しく報道されていた頃と何も変わらないように感じられた。

『TSUNAMI』世界共通語になった日本語のひとつだ。この言葉が世界で使われるようになるほど過去に何度も日本を津波が襲った。過去に幾度も津波を体験しているにも関わらず今回の震災で多くの犠牲者が出た。過去の経験から防ぎようはなかったのだろうか。「震災は忘れた頃にやってくる」そう言われるが、この未曾有の震災を人はいずれまた忘れてしまうだろうか…。

それぞれの人間が過去に何らかの辛い経験を持っている。僕も震災で受けた辛い経験とは比較にならないが、辛く苦い経験は多少持っている。しかしその辛い経験は長い年月を経て徐々に浄化されていく。浄化することで人はそこに留まらず未来を生きていけるのかもしれない。しかし心のどこかにしっかりと記憶し未来を生きていくための教訓にしないと、また辛い経験を繰り返してしまうことになる。

翌日、無事にロケが終了し帰路についた。帰りの飛行機は窓側だったので離陸時から外を眺めていた。飛行機が高度を上げると遠くに被災した大地が広がっていた。また笑顔溢れる土地に戻って欲しいと願っている。そして、いずれまた大震災が日本を襲ったとしても犠牲者がひとりも出ないことを祈っている。

written by マックス

2013年05月10日

私に社会人の基本を教えてくれた大企業に勤める先輩が3年ほど前に東京の本社転勤になり、ささやかながら送別会と銘打って二人で会食をした。彼は栄転だったようで非常に喜んでいた。そして私もその先輩に負けないように福岡で頑張ると約束した。

先日その先輩に福岡でばったり会った。出張かと思い近況を聞くと、多くを話したがらず、「この年になるとリストラとか色々あるから、今度ゆっくり飲みながら話すよ」と意気消沈しながらその場から去っていた。本社でトラブルでもあったのだろうか…。東京本社転勤が決まった頃の彼とはまるで別人のようだった。

日本人はひとつの会社に留まり定年退職を迎える人が多い。しかし最近は新聞やテレビの報道でリストラの言葉が頻繁に飛び交う。企業戦士として戦い続けたにもかかわらず、年を重ねる度に徐々に不要な存在となり、リストラ対象の枠に入ってしまう。特に自分の力で生きていくことを身に着けていない大企業のサラリーマンにとっては過酷な時代だ。

以前、僕は勤めていた会社が突然倒産した経験がある。再就職も考えたが、30代だったこともあり当時の仲間と独立した。荒波に揉まれた経験が多少あるので安住の地を失ってもそう怖くはない。また新たな場所を探せばいいだけなのだ。そのためには日頃から心地良い風にいつも当たるのではなく、嵐のような強風や荒波に揉まれる必要がある。そして自分の船をしっかり操れる訓練が必要だ。

先日会った先輩がこれからどのような道を選ぶのかは分からない。しかし今の時期を嵐の時期と考え、前向きに自分の船を再び操り新たな場所を探して欲しい。そして僕が社会人になりたての頃に見た、勇壮な姿の先輩に早く戻って欲しい。

written by ベルハルト

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