「機を見るに敏」と言うが、最近は好機と分かっていても直ぐに動かない人間が多いようだ。
好機が訪れたことに気付かないのか、それとものんびりしているのか…。
もし時代が戦国時代で、戦の最中に好機が訪れたとき、躊躇せず敵に攻撃を仕掛けなければ戦に破れ首を刎ねられてしまうことになる。
戦国時代、甲斐の戦国大名だった武田信玄は「風林火山」という文字を軍旗に記し、戦場に出掛けた。「風林火山」とは「疾やきこと風の如く、徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し」の意で、好機と思うや敵に知られないように静かに素早く進み、勢いよく敵に襲い掛かり、敵を倒す。そして奪ったその敵地からは是が非でも動かないと言うことだ。
武田信玄は日頃から家臣たちにそのことを教え、家臣は忠実にそれを実践していたのだろう。また武田軍は日頃より諜報活動を行い敵の動きを掌握しており、絶好の機会を見逃すことがなかった。
日々、営業活動を行っていると多くの機会に出会う。その機会が今後を左右するターニングポイントで、好機であったり、逆に危機であったりする。どちらにしてもその時の素早い行動で結果は大きく左右される。
そのターニングポイントでしっかり頭を使い、策を練り、素早く正しく行動することで、好機でも危機でも最良の方向へ導くことができる。
「機を見るに敏」これは経験で身に付いていくのだろう。若いうちはターニングポイントに差し掛かったとき、それがターニングポイントなのか分からないことの方が多く、時間が経過し結果が出て、初めてあの時がターニングポイントだったと気付く。
だから若いうちは多少バカになって全ての機会を好機と思い機敏に動いたほうが良い。また若いうちは策を練っても良い策が浮かばないので、「当たって砕けろ」ぐらいの気持ちで丁度良いのではないだろうか。
好機は直ぐに通り過ぎていくので決して逃してはならない。そしてターニングポイントでの素早い行動で人生は大きく左右される。
written by SDB-1
僕が社会人になり広告会社に入社したての頃、大手の新聞社に1年ほど預けられた時期がある。右も左も分からない僕を新聞社のTさんが面倒を見てくれた。彼は僕の面倒を見ることで自分の仕事が増えたと、たまにぼやいていたが、彼はメディアと広告の基本を僕に教えてくれた。当時の新聞社の広告部署は活況で彼は花形だった。
先日、久しぶりにTさんに会って話す機会があった。彼が新聞社に入社した頃は、「就職したい企業ベスト10」に必ず彼の勤める新聞社の社名があったそうだが、今ではネットなどの新興メディアの台頭により新聞購読者と広告は激減し、就職を希望者も減ったそうで、「就職したくない企業ランキング」に社名が出るようになったと、笑っていた。
彼は大企業で長く生きていると、何かあったら潰しがきかないと言う。大企業で働く人間は外部の企業と戦うことよりも、企業の内部で自らの評価や出世のために戦うことが多いそうだ。新聞社もまた外部の企業と戦うことが少なく実は虚弱体質だったのだろう。
ある時期からネットなど予想しなかった新興メディアが急速に台頭し、メディアを取り巻く環境は一変した。そして既存メディアは新興メディアによって一気に形勢が不利になってしまった。彼の話を聞きながら僕は新聞社のおかれた環境を頭の中で直ぐにSWOT分析をすることができた。
彼は僕の歩んできた道を知っており、やはり中小企業で戦い、荒波に揉まれた方が逞しく、しぶといと言いながら僕に感心していた。
僕は多くの素晴らしい人に出会い、多くの知恵と知識を教えてもらった。僕はその教えられたことを素直に実行してきた。僕に多くを教えてくれた人たちは常に戦場に身を置いている戦士たちで、彼らは戦うことが好きで、時間があるときはいつも武器を手入れし、作戦を立て訓練をしていた。そして戦場では必死に戦い勝負に勝つと、雄叫びを上げ景気よく酒盛りをする人たちだった。
僕はそんな彼らと馬が合った。
以前は大企業に就職すると一生安泰だったようだが、今は楽ではないようだ。
written by 彦之丞
以前、勤めていた会社の先輩が久しぶりに事務所を訪ねてきた。彼は今も大手広告会社で働いているが、15年前に一緒に働いていた頃と見た目は随分変わり、まるで初老のおじさんのように見えた。
またその頃と比べると会話の内容も変わり、彼は親の介護のことや定年後の生活などを話した。
彼の務める会社の定年は64歳らしいが、その歳まで会社に残る者はいないそうだ。理由は60歳を過ぎると現在の自分の部下が上司になり立場が逆転するからだそうだ。
彼も60歳で退職すると言う。
「退職金がたんまり入るだろうから安泰なのでは?」
僕が尋ねると、彼は退職金の額は雀の涙ほどだと言う。
昔は退職金が数千万円などと良く耳にしたが、近頃の多くの企業では退職金は乏しいそうだ。
しかも年金も当てにならないので、彼は退職後、再就職先を探すと言う。
「会社やめたらお前のところで、俺どうかな~?」
と彼は冗談交じりに言う。
「筆記試験と面接があるので、それ次第でしょうね!」
僕がそう返すと彼は笑っていた。
そして近いうちに一杯やろうと彼はそう言って帰っていった。
最近、「1億総活躍」と安部首相は奇妙なスローガンを掲げ、改革に乗り出そうとしている。
ところで総務省の平成26年度の調査では、日本の総人口はおよそ1億3千万人弱で、65歳以上が3千万人強いる。
65歳以下の全ての人口がおよそ1億人ということになる。
逆に0歳児から22歳までの人口もおよそ3千万人弱なので、22歳以上の全ての人口もおよそ1億人となる。
さて、安部首相の掲げる「1億層活躍」とはどちらの1億人を指しているのだろうか?
生まれたばかりの赤ん坊から活躍しなければならない社会なのか、それとも寝たきりの老人までが活躍しなければならない社会なのだろうか?(笑)
先の大戦で日本軍が「1億総玉砕」とスローガンを高々と掲げていたことを、ふと思い出した。
written by マックス