東京から大切なお取引先の方が久しぶりに来福され、昼下がりの時間から一杯やることになり、行きつけの老舗料亭へ。部屋に通され障子を開けると縁側があり、そこから緑に覆われた庭が見える。その奥に光で水面が煌く川が流れている。都会の喧騒を忘れさせる福岡を代表する名料亭だ。料亭を利用する多くのお客さんは懐石料理のコースを頂くのだが、中途半端な時間だとコースを頼まずにお任せの一品料理で一杯やれるところが気に入っている。
窓から五月の心地良い風を感じながら3人には広すぎる畳の間で、酒の肴を摘みながら裃を脱いでゆっくりと一杯やる。まさに至福の時間だ。時間が経過するごとに仕事に厳しい顔が穏やかな顔に戻っていく。そして酒が進むと少しずつ声も大きくなり会話が盛り上がる。20年近く付き合っているにも関わらず良く話が尽きないものだ。頃合を見て料亭の女将が部屋に挨拶に来て、また場が盛り上がる。
現代はパソコンや通信機器が進歩し仕事の処理速度は以前に比べ随分早くなった。また食事のスタイルも随分変化(進化?)している。町にはコンビニやファーストフード店がひしめき合い食事の時間帯は多くの人がレジに並ぶ。要するに生活の速度が以前より増しているのである。そんなに生活の速度を上げて人間はどこへ向かっているのだろうか?ふと、そう思った。
きっと生活の速度が増すことで現代人は多くのものを見過ごしてしまい、新しいアイデアやヒントを発見することはできなくなっているのだろう。それより季節や自然を感じ、旬の味覚を味わいながら、裃を脱いで人と触れ合う。そして人間の持つ全ての感覚(五感)を刺激するほうが多くのものが見えてくるし、遥かにアイデアやヒントは生まれてくるだろう。
五感を刺激しないとその先にある第六感は養うことはできないはずだから。
written by マックス
私に社会人の基本を教えてくれた大企業に勤める先輩が3年ほど前に東京の本社転勤になり、ささやかながら送別会と銘打って二人で会食をした。彼は栄転だったようで非常に喜んでいた。そして私もその先輩に負けないように福岡で頑張ると約束した。
先日その先輩に福岡でばったり会った。出張かと思い近況を聞くと、多くを話したがらず、「この年になるとリストラとか色々あるから、今度ゆっくり飲みながら話すよ」と意気消沈しながらその場から去っていた。本社でトラブルでもあったのだろうか…。東京本社転勤が決まった頃の彼とはまるで別人のようだった。
日本人はひとつの会社に留まり定年退職を迎える人が多い。しかし最近は新聞やテレビの報道でリストラの言葉が頻繁に飛び交う。企業戦士として戦い続けたにもかかわらず、年を重ねる度に徐々に不要な存在となり、リストラ対象の枠に入ってしまう。特に自分の力で生きていくことを身に着けていない大企業のサラリーマンにとっては過酷な時代だ。
以前、僕は勤めていた会社が突然倒産した経験がある。再就職も考えたが、30代だったこともあり当時の仲間と独立した。荒波に揉まれた経験が多少あるので安住の地を失ってもそう怖くはない。また新たな場所を探せばいいだけなのだ。そのためには日頃から心地良い風にいつも当たるのではなく、嵐のような強風や荒波に揉まれる必要がある。そして自分の船をしっかり操れる訓練が必要だ。
先日会った先輩がこれからどのような道を選ぶのかは分からない。しかし今の時期を嵐の時期と考え、前向きに自分の船を再び操り新たな場所を探して欲しい。そして僕が社会人になりたての頃に見た、勇壮な姿の先輩に早く戻って欲しい。
written by ベルハルト
日本人はとにかく「努力」という言葉が大好きで、お客さんから難しい相談を受けたときや、上司に叱られたときに直ぐ「努力します」と口にします。当社の中でも良く耳にする言葉です。そこで「努力」という言葉を広辞苑で引いてみると「目標実現のため、心身を労して努めること」と記されていました。
要するに「努力」とは「目標を決め、その目標に到達するために全身全霊でことに当たる」ことなのです。そのためには、まず目標を定めなければなりません。目標が無ければ努力できないわけです。またその目標を実現するために正しいロードマップが必要となります。ロードマップがないと無駄なことが増えてしまいます。そして、その目標とロードマップを消化する理解力が必要です。最後にその目標に向かって全身全霊で労して努めなければならず、継続するための持続力と忍耐力も必要です。
日本人の多くは結果よりも努力する過程が大切だと考えているようですが、闇雲に努力することは真の努力ではないのです。真の努力をするには目標設定、ロードマップ設定、目標とロードマップの理解力、そして持続力と忍耐力が必要です。
F1レースは新幹線を越える時速300キロの世界で、重力の4倍の負担が肉体にかかるそうです。そして一瞬のミスがドライバーの死を招く極限の世界。そのF1の世界で「音速の貴公子」と言われたアイルトン・セナ。グランプリで連続優勝を果たしたヒーローの最期はレース中での事故。足早に駆け抜けたドラマチックな人生でした。
彼はこんな言葉を残しています。
『多くの人間がベストを尽くし極限まで努力する。単に極限までの努力なら誰でもできる。問題は極限からの上なんだ。ここから上ができた時に、初めて世界の頂点に立つんだ』
実際、世界の頂点に立った人であるだけに彼の言葉は重く感じます。彼は目に見えない茨の道を目標実現に向け極限を超え未知の世界で努力し続けヒーローになったのです。私たちはアイルトン・セナのようなヒーローになれなくても、自分の目標実現に向けて無駄な努力ではなく、正しく実のある努力をしなければならないのです。
もうひとつアイルトン・セナの言葉を紹介します。
「この世に生を受けたこと、それだけで最大のチャンスをすでにものにしている」
written by マックス