ラジオからクリスマスソングが頻繁に流れ、今年も残すところ2週間になった。今年も色んなことを学び経験した1年だった。
今年は事務所を閉鎖し完全テレワークで業務を始めた。当初は多少なりとも不安だったが、新型コロナウィルスの影響でテレワークが世間に浸透したこともあり、業務ルールを決めるとスムーズにテレワークに移行できた。以前のように出退勤の時間を決め、時間に縛られて仕事をしていたことが、今では不思議で疑問に感じる。今まで疑問も抱かず当然のことのようにやっていたことでも、これからは一度立ち止まって、そのやり方が果たして正しいのか、他にやり方はないのか、考える必要があるとつくづく感じた。
また大きな事故を目の当たりにして命の儚さを知った。夕食を取っていると外からクラクションと急ブレーキのタイヤの摩擦音、それに「ドン」と大きな音が聞こえたので、事故だと思い外に飛び出してみると、自転車に乗った少年が車に撥ねられ、道路の真ん中に倒れている。少年に駆け寄るとまだ呼吸はあったが、意識は無く口から血のまじったドロっとした物を吐いていた。状況を見守っていると、その少年の呼吸が止まったので僕は慌てて心臓マッサージを始めた。僕はこの時、生きてきて初めて心臓マッサージを行った。間もなくするとパトカーと救急車が駆けつけ、少年は救急車で病院に運ばれた。翌日、ニュースでその少年が亡くなったことを知り、僕は虚しさと悲しみで途方に暮れた。
この事故を目の当たりにして、人は偶然の事故で突然被害者になることや、傲りや気の緩みによる不注意で突然、加害者になることを学んだ。その日、少年も少年の家族もまさか事故に巻き込まれて少年が亡くなるとは想像もしていなかっただろう。まさに一寸先は闇だ。
そして妹宅で新型コロナウィルスによる家庭内クラスターが発生し、偶然、妹宅に遊びに出掛けていたお袋も感染し、皆、2週間外出することができず、妹宅で自宅待機することになった。お袋の症状は軽かったが、外出できずに体が弱らないようにと妹宅にあったサイクリングマシンで運動中に転び、肋骨を5本折り救急車で運ばれ入院することに。妹夫婦は10日ほど高熱が続き、酸素濃度が低下した妹の夫は救急車で運ばれ集中治療室に入った。
今では皆元気に日常の生活を送っているが、何よりも健康が大切だと学んだ。
今年一年、僕自身に大きな災難は無く無事に過ごすことができた。今年、経験し学んだことを忘れず、来年は活動的な実りある1年にしたいと考えている。
海戦で撃沈された戦艦から海に投げ出された水兵の記録を読むと、夜の海を漂っていることが何よりも怖かったという。月も星も出ていない夜の海は暗闇で周りの状況は全く見えず、海中にはサメがいるのではないかと一晩中怯えて過ごしたという。
人は目が効かず周りが見えないと恐怖を感じるが、未来が見えない状況でも同じ気持ちを抱いてしまう。
数年前に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書によって「老後の30年間で約2,000万円が不足する」と発表され、国内では波紋が広がった。報告書には以下の一文があった。
「収入と支出の差である不足額5万円が毎月発生する場合は、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の資産の取り崩しが必要になる」
これは平成29年(2017年)の家計調査(家計収支編)における高齢無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の平均的な実収入合計は209,198円に対し、平均的な支出合計は263,717円で、収支は毎月約55,000円の赤字になることが根拠になっている。当然、この平均的な実収入には年金が含まれており、しかも日本人の寿命は延び100年時代と言われ赤字額はさらに増えることが考えられ、誰もが必ず訪れる見えない老後が心配だ。そこで早いうちから精度の高い老後の計画を立て、見えない未来を見える化することが重要だ。
まずは引退の時期までの収支を計算し、その後、90歳から100歳まで生きることを前提に未来の収支を計算しなければならない。もし引退後の収支がマイナスになるのであれば、引退の時期を延長し収入を確保しなければならない。しかし高齢になって働きたくないのであれば、現役時代にマイナスになる費用を貯めておかなければならない。
今の時代は銀行で貯金をしても利息は0に近いので、リスクの低いiDeCoやNISAなどの金融商品に投資し、さらに余裕資金があれば他の投資も検討し時間を味方につけて投資をしなければならない。そして投資したものが将来どのくらいのリターンになるのか、リスクも含め計算し計画を立てなければならない。ここで最も大切なことはアバウトに計画を立てるのではなく、高い精度で緻密に引退以降の毎月の収支を計算するべきだ。
多くの人が見えない老後を心配するが、決して投げやりになるのではなく、しっかりと現実を見つめ未来を知ることで早いうちから対策を打つことができ心配は和らぐ。
決して臭いものに蓋をしてはならない。
人生100年時代と言われるように日本は長寿社会になり、企業は70歳まで雇用することが努力目標となった。そのため日本人は随分長い時間を働かなければならい。
大学を22歳で卒業し70歳で定年退職を迎えると48年間働き、ほぼ半世紀を働くことになる。週休2日の勤務で年間の祝日を16日とし有給休暇を含めないと年間245日働き、残業を含まず1日8時間労働で年間1,960時間となる。この労働時間を48年間続けると、何と94,080時間という膨大な時間を働くことになり、通勤時間を加えると100,000時間を優に超える。
僕の働く広告業界は基本的に週休2日だが、残業や接待は多くさらに休日にイベントなどの業務を行うこともあるので、労働時間は他の業界と比べると多い。(だからと言って皆が効率良く仕事をしているわけでもなく、無駄な人員もやたらと多いが…)
ところで「石器時代の経済学」という本がある。この本によると未開社会においての労働時間は1日3、4時間程度で、しかも毎日働かないそうだ。現在、オーストラリア北部に暮らす2つの原住民グループを14日間観察したところ、1つのグループは狩猟、採集、食事の準備、武器の手入れを含め成人の労働時間は1日あたり約4時間で、2つ目のグループでは1日あたりの労働時間は約5時間だったそうだ。またベネゼエラの狩猟採集民族は狩猟採取に掛ける時間は1日2時間未満で、何と1時間の労働で1日分の食糧が調達できるという。
僕が生まれた昭和は皆、豊かさを求め、寝る間を惜しんで猛烈に働いた。当時、その時代を象徴するようなCMがあった。そのCMは栄養ドリンクのCMだったが、キャッチコピーにはこんな言葉が使われていた。
「あなたは24時間働けますか?」
今の時代にこのCMを流すと社会的に大問題になるだろうが、当時はこの考え方が当り前だった。
昨年から続く新型コロナウィルスの影響で働き方は変化し、在宅でのテレワークが普及し副業まで認める会社も増え、以前よりも自由に働くことができる時代になった。僕も今年の1月から在宅でテレワークを始めそろそろ1年になるが、通勤時間が無いうえ昼食を外で取る必要がないので、時間的にも金銭的にもゆとりが生まれた。もっと働き方を変え効率良く仕事をすることで、穏やかに生活を送れるのではないだろうか。
未開社会で暮らす原住民は現代の日本人を見てどう思うのだろうか。
「日本人は一生で100,000時間も働かないと生活できないらしいぞ!」