数年前、指に小さな傷を負い瘡蓋になると、繰り返し剥がしてそのうち瘡蓋はイボになってしまった。
このイボは数ヶ月でポロリと取れ、何度も繰り返し同じ箇所に出来て、しかも少しずつ大きくなっていく。
忌々しいイボだ。
そこで馴染みの皮膚科で診察してもらうと、ウイルス性のイボと言われた。
傷を負った後、免疫力が低下していれば、その傷口からイボのウイルスに感染するそうで、免疫力の低い子供や高齢者に多いそうだ。
「ウイルス性のイボ…」
放っておいても問題ないが、少しずつ大きくなるので取ったほうが良いと言われた。そしてイボを取るための処置は約-260℃になる液体窒素を患部に塗るそうだ。
「-260℃…」
先生はアルミの小型の魔法瓶のようなものを処置室の奥から持ってきた。その容器の蓋を開けると、す~っと白い冷気が立ち上がった。先生からは痛いからと釘を刺された。
容器の中にステンレス製の割り箸ほどの棒を入れ、その棒の先に液体窒素を付着させ、僕のイボの患部に押し当てた。時間にして15秒ほどだった。
冷たさは全く感じないが、先生の言うとおり確かに痛かった。その後、消毒しバンドエイドをつけて処置は終わった。先生からは根が深そうなので、一週間後にもう一度同じ処置をしますと言われた。
「…」
自宅に戻りバンドエイドを外すと低温火傷なのだろう。イボの周辺の皮膚は大きく水脹れになっていた。一週間後、再び液体窒素の低温治療のため、覚悟を決めて病院に出かけた。先生は水脹れした皮膚を鋏で切り剥がした。低温火傷の箇所の皮膚がべろんと剥げた。先生は剥げた箇所をルーペで見ている。ウイルスの根っこがないか確認しているそうだ。
「おっ、一回の処置で根こそぎ取れとる。今日は追加の処置はせんでよかでしょう。しかし油断したらいかん。もしまたイボの兆候があったら、その時はまた処置ばしましょう。」
僕に寄生していた忌々しいイボのウイルスは凍りついて凍死したようだ。
「ざまーみろ!」
written by ベイダー