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大晦日の仕来り
2015年01月09日

いつの頃からか大晦日の夜に、近くの寺で除夜の鐘を突くことが恒例行事となった。そして毎年繰り返し行っていると、験を担いでしまい、遂には仕来りになってしまった。

この寺では紅白歌合戦を住職一家で見ているようで、毎年、紅白歌合戦が終わらないと除夜の鐘を突き始めない。僕らが除夜の鐘を突いて家に戻ってくる頃には、既に年が明けてしまっている。それから蕎麦を食べるので年越し蕎麦というよりも、年明け蕎麦になってしまう。

昨年のことである。
この寺に電話を掛けて、何時から除夜の鐘を突くのか尋ねてみた。
「紅白歌合戦が終わった頃からですかね~」
と、適当な返事が返ってきた。

毎年多くの人が鐘を突くため列を作って並んでいるのだが、今年は真っ先に突いて年を越す前に家に戻ろうと思い、甥っ子を連れて少し早い時間からその寺に出掛けた。寺に着いた頃には数名が既に集まってきていたが、まだ列ができていなかったので、幸い一番に並ぶことができた。
しかし寒い大晦日の夜に僕らは並んで待っているにも関わらず、住職の家族は暖かい部屋で、紅白を見ながら年越し蕎麦でも食べているのだろうと思うと、何故か腹が立ってきた。心の中で呟いた。
「仏の道で生きているのだろ!紅白歌合戦見ている場合か?」

たかが僕と甥っ子の二つの鐘の音くらい気にすることかと、住職には無断で、甥っ子と鐘を突くことに。住職に無断で鐘を突くことに戸惑っていた甥っ子の背中を押してやった。
甥っ子は勇気を出して思い切り鐘を突いた。
『ご~ん』
続いて、僕が鐘を突く。
『ご~ん』
そうすると僕らの後ろに並んでいた人も順番に鐘を突き始めた。僕らが寺を後にする頃に驚いた住職が家から飛び出してきた。
「誰じゃ!勝手に鐘を突いとるのは!!」
と怒鳴りながら順番に鐘を突いている人を叱っていた。

今年は勝手に除夜の鐘を突かずに住職に従い鐘を突いた。
あまりの寒さで翌日体調を崩し高熱で寝込んでしまった。

written by ベイダー


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