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秘密基地閉鎖
2014年11月14日

馴染みのバーが今年一杯で店を閉めるそうだ。
そこで遅い時間だと混んでいるだろうし、しみったれた話はできないだろうと思い、敢えて早い時間にその店に出掛けた。その店のマスターとは彼が独立する前からの付き合いで、25年ほどになる。店に入ると久しい僕をマスターは笑顔で迎えてくれた。

「閉店案内のDMを制作していて、もうすぐ送る予定にしているんですよ」
とマスターの方から切り出してきた。

他の客も殆どいなかったので思い切って閉店の理由を聞くと、近年、売上が右肩下がりに落ちているそうだ。特に接待など会社での利用が減少し、領収書を求められることが無くなったそうだ。1軒目の食事までは出掛けるものの、2軒目以降で利用されるバーまで客足が延びていないと言う。また20代、30代の若者のお酒離れも進んでおり、会社の仲間とお酒を飲むことが減っているそうだ。
そしてマスターが店の常連さんから聞いた話を僕にしてくれた。

その常連さんが勤める職場の若い社員に

「〇〇さんがもうすぐ引退だから送別会をやるぞ!お前も世話になったんだから参加しろよ!」と伝えると、
「それって、残業になるですか?」と返されたそうだ。
「残業?」
「はい。残業じゃないと残業代が出ないですよね?残業じゃなければ遠慮します!」
「…」

その常連さんは若い社員に返す言葉が無かったそうだ。

飲食店はコミュニケーションを取るための場でもあり、良いお酒は悲しいことや悔しいことを和らげてくれて、逆に嬉しいことを更に嬉しく楽しくさせてくれる。

マスターは店を閉め、日曜が休みの昼の仕事を探すそうだ。独立して月の休みは平日に2日しかなかったそうで、全く子供と遊んでやったことが無いそうだ。

僕の秘密基地がまたひとつなくなる。

written by モンコ


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