敬老の日のお祝いで高齢の母を温泉に連れて行く予定だったが、暑さが続いていたので、時期を延ばし、今週、湯布院に出掛けた。当日の天気はあいにく小雨で半袖では多少肌寒く感じたが、温泉に入るには調度良い気温だ。宿に着き部屋の窓を開けると、目の前には緑の山が広がり遠くに由布岳が望める。一緒に連れて行った愛犬も部屋の前にある庭を喜んで走り回っていた。自宅マンションは改修中で騒々しいので静かな温泉宿で過ごし心が和んだ。
ところで、先週、テレビキー局の親しい先輩からスマホに着信があった。近く来福するので食事の誘いだろうと折り返し電話を掛けると、先輩は元気のない声で電話に出た。
「すみません。お電話を貰ってましたが?」
「折り返しすまんな…。実は○○が秋分の日に心筋梗塞で死んだんだよ」
「えっ!?マジですか!?彼は僕より若いし冗談でしょ?」
「こんな冗談を言うか。マジだよ。東京は亡くなる高齢者が多く、焼き場が混んでるんで直ぐに火葬ができず、この時期になったそうだ。今日が通夜で明日が葬式だ」
「今日が通夜ですか…。弔電を打つので訃報を送って下さい!」
亡くなった彼は、電話をくれた先輩の元部下で、以前うちの会社を担当し来福すると決まって楽しく飲んだ仲だ。詳しく尋ねると、彼は関西支社長に昇格し東京から単身で大阪に赴任していた。秋分の日、得意先とゴルフに出掛けプレー中に突然、体調が悪くなりプレーが出来なくなり休んだそうだ。ゴルフを終え、夕方からゴルフで回った得意先との会食があったので、無理して参加したが気分が優れず途中で帰ったという。
その夜、彼は東京に住む家族と電話中にむせてしまい電話は途中で切れたそうで、その後、家族が何度も折り返し電話を掛けても彼は電話には出なかったという。不安に感じた彼の奥さんは、翌朝、東京から大阪の彼の部屋に駆け付け中に入ると、彼はすでに亡くなっていたそうだ。もし彼がゴルフ場から直ぐに病院に駆け込んでいれば、一命は取り留めることができたのかもしれない。最近、先輩の周りで若くして急死する人が多く、原因は新型コロナのワクチンの影響ではないかという。
「24時間戦えますか?」昔流行った栄養ドリンクのCMのコピーだが、亡くなった彼は日々、営業業務に追われ夜は連日接待、休日は接待ゴルフと休む間もなく働いていた。そんな生活が何年も続き心身に大きな負担が掛かっていたのだろう。数年前、彼と一緒に飲んだ時、僕にこう言った。
「うちのかみさんできた奴で、やりくり上手でしっかり老後の資金を貯めてるんですよ。定年後は再就職はせずゆっくりするつもりです」
彼の言葉を思い出し無念に思えた。また彼と笑いながら酒を飲みたかった。