学業の神様で知られる太宰府天満宮の境内には約6千本の梅が植栽されており、もうすぐ見頃で、あと1カ月もすれば桜の開花も始まり本格的な春が訪れる。桜が満開になると愛犬Q次郎を連れて花見に出掛けよう。
ところで今冬は火災が多く発生し消防車のサイレンを何度も耳にした。先日も夕方風呂に入っていると、サイレンが聞こえるので風呂の窓を開けて外を覗いてみると、消防車が数台列をなし勢いよく走って行く。サイレンは自宅近くで止まったので、どうやら近所で火災が発生しているようだ。風呂から上がりスマホで火災現場を検索すると、自宅から300mほど離れた建物で火災が発生していた。近所での火災だったので、ふと子供の頃の記憶が蘇った。
お袋は看護婦で自宅近所の病院で働いており、夜勤の日は決まって深夜に帰宅する。お袋は仕事が終わると節約のため病院の公衆電話からワンコールで自宅に電話を掛け、自宅の固定電話が「リ~ン」と1度鳴ると、親父はお袋を迎えに直ぐに家を出て行った。
お袋が夜勤のある夜、小学生だった僕は床に入ってぐっすり眠っていたが、突然、親父に叩き起こされた。
「おい!起きろ!近くで火事や!」
そして僕はパジャマのまま火災現場に連れ出された。その夜、いつものように自宅の電話が鳴り親父がお袋を迎えに行った帰り、自宅から数百メートル離れた上空が赤く染まっていたので、自宅に戻ると直ぐに親父は消防署に通報したそうだ。
火災現場に着くと消防隊はまだ到着しておらず、燃えている家の隣人数人がバケツに入った水で消化していたが、まさに焼け石に水で火の勢いは増すばかり。無数の火の粉が周囲に降り注ぐ中で住人なのか、年配の女性が大きな声で泣き崩れている。僕は真っ赤に燃え上がる光景を目の当たりにし恐怖で呆然としていた。すると親父が僕にこう言った。
「おい!よう見とけ。火事の怖さをちゃんと覚えとけ!」
間もなくして消防隊が現場に到着すると手際よく放水を始め火の勢いは弱くなった。その後、お袋に手を引かれ自宅に戻る途中、お袋が言った。
「あんた、ぐっすり寝とったけん起こさんどこうと思ったけど、お父さんが火事の恐ろしさばちゃんと見せといた方が良いと言うけん…眠いのにごめんね」
もうすぐ桜の咲く穏やかな春が訪れるが、これからも乾燥した日は続く。火事にはくれぐれも気を付けてほしい。
(今年から自分のことを“私”と表現するはずだったが、あまりにもしっくりこないのでやはり“僕”と表現することに)