小国のウクライナはアメリカやヨーロッパ西側諸国から軍事支援を受け、大国ロシアに降伏することなく徹底抗戦している。ゼレンスキー大統領はウクライナ国民に団結を呼びかけ、世界にウクライナの惨状を伝え援助を求めている。またロシアのプーチン大統領にはロシア語で「我々の土地から出て行け!その気がないなら交渉の席に着け!」と、即時撤退か直接交渉を要求している。
経済力、軍事力ともにロシアに圧倒的に劣るウクライナのゼレンスキー大統領は亡命することなく、命を懸けてロシアに立ち向かい、世界に勇気と感動を広げている。
ところで「戦争広告代理店」という本がある。本書は1992年にボスニアとセルビアとの間で起きたボスニア紛争の舞台裏で繰り広げられた情報戦を紹介したドキュメンタリーだ。戦力的に優勢なセルビアに対抗するためボスニアはアメリカのPR会社に広報業務を依頼し、情報戦を展開していく。
業務を担当したPR会社はセルビアによる他民族殺戮をアピールし、「民族浄化」と言うキャッチコピーを使いアメリカの政界や多くの団体にキャンペーンを行い、米国世論ひいては国際世論にセルビアに「悪」のレッテルを貼ることに成功する。そして世界中のメディアはセルビアを「ナチスの再来」と報道し、セルビアは世界からバッシングを受け国連から追放され、終にはNATOに空爆され敗北してしまう。
本書は巧みな情報戦によって戦争で有利に戦えることを証明している。まさに「ペンは剣より強し」だ。
ボスニア紛争の頃は世界中で新聞やテレビが主流メディアだったが、今の時代はインターネットの普及によりSNSを利用しライブで世界に情報を発信することができる。ウクライナのゼレンスキー大統領は巧みにSNSを利用し、自ら世界にウクライナの惨状とロシアに決して屈しない姿勢をアピールすることで世界中から共感を得ている。逆にロシアはウクライナへの侵攻を自国のプロパガンダに利用し、世界には嘘の情報やフェイクニュースを発信し世界中からバッシングを受けている。
今回の戦争もボスニア紛争のように情報戦によってウクライナに勝利をもたらすかもしれない。世界中が固唾を呑んで見守っている。