初めて買った車は中古のトヨタの4WDピックアップトラックだ。そのトラックは以前の持ち主が手を加えていたので、オーバーフェンダーや荷台にはロールバーが取り付けられ、ボディーカラーは鮮やかな紺色だった。
僕は親にお金を借りてこの車を購入したが、親に購入する車の車種など伝えていなかったので、車を購入し初めて自宅に乗って帰ると、お袋は目が点になった。
「あんた、トラックば買ったとね?」
「うん。格好良かろ!」
「しかも2人乗りやし、一体、荷台に何ば乗せるとね?」
「何も乗せんばってん、お袋が荷台に乗りたいなら乗せてやるばい。これは4WDやけん、荒れた山道や砂浜も走るったい。ちょっと近所ば一周してやるけん、横に乗らんね?」
さすがにお袋は荷台に乗らなかったが、高い助手席にお袋が座り僕は近所を一周した。
「座席が高いけん外がよう見えるね。ばってん乗り心地は悪いし、やたら目立つけん、私はもうこのトラックには乗らんよ」
お袋は助手席でこう言った。
当時、ガソリンスタンドは今のようにセルフスタンドは無く、スタンドのスタッフに給油量を伝えガソリンを入れてもらっていた。お金に余裕のなかった僕は「10ℓお願いします」、「1,000円分お願いします」など、ガソリンの給油量か、給油金額をスタッフに伝えガソリンを給油していた。1,000円分を給油してもらう時は何とも情けない気持ちで小さな声でスタッフに伝えていたが、まとまったお金がある時はドヤ顔で「満タンで!!」と大きな声でスタッフに伝えた。当時のガソリン価格は確か100円ちょっとで、1,000円分の給油だと10ℓ弱の量を給油することができた。
今週に入ってガソリン価格の上昇が続き1ℓ170円を超え、政府はガソリン価格を抑えるため石油元売り会社に補助金を出す異例の対策に踏み切るが、そんな政策を実施するよりガソリン税を引き下げる方が早いのではないだろうか。政府の行う政策はいつもややこしく間違っているように思える。ガソリン価格の高騰は交通の便の悪い地方や、暖房で灯油が必要な北国に大きな影響を与える。また全ての物流コストにもガソリン価格が転嫁されるため、物やサービスの価格も上昇してしまう。
ガソリン価格が高くなった今の時代に、果たして1,000円分の給油で凌ぐ人はいるのだろうか。僕の学生時代は古き良き時代だったのかもしれない。