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臭いものに蓋をしてはならない
2021年12月10日

海戦で撃沈された戦艦から海に投げ出された水兵の記録を読むと、夜の海を漂っていることが何よりも怖かったという。月も星も出ていない夜の海は暗闇で周りの状況は全く見えず、海中にはサメがいるのではないかと一晩中怯えて過ごしたという。
人は目が効かず周りが見えないと恐怖を感じるが、未来が見えない状況でも同じ気持ちを抱いてしまう。

数年前に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書によって「老後の30年間で約2,000万円が不足する」と発表され、国内では波紋が広がった。報告書には以下の一文があった。
「収入と支出の差である不足額5万円が毎月発生する場合は、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の資産の取り崩しが必要になる」
これは平成29年(2017年)の家計調査(家計収支編)における高齢無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の平均的な実収入合計は209,198円に対し、平均的な支出合計は263,717円で、収支は毎月約55,000円の赤字になることが根拠になっている。当然、この平均的な実収入には年金が含まれており、しかも日本人の寿命は延び100年時代と言われ赤字額はさらに増えることが考えられ、誰もが必ず訪れる見えない老後が心配だ。そこで早いうちから精度の高い老後の計画を立て、見えない未来を見える化することが重要だ。

まずは引退の時期までの収支を計算し、その後、90歳から100歳まで生きることを前提に未来の収支を計算しなければならない。もし引退後の収支がマイナスになるのであれば、引退の時期を延長し収入を確保しなければならない。しかし高齢になって働きたくないのであれば、現役時代にマイナスになる費用を貯めておかなければならない。
今の時代は銀行で貯金をしても利息は0に近いので、リスクの低いiDeCoやNISAなどの金融商品に投資し、さらに余裕資金があれば他の投資も検討し時間を味方につけて投資をしなければならない。そして投資したものが将来どのくらいのリターンになるのか、リスクも含め計算し計画を立てなければならない。ここで最も大切なことはアバウトに計画を立てるのではなく、高い精度で緻密に引退以降の毎月の収支を計算するべきだ。

多くの人が見えない老後を心配するが、決して投げやりになるのではなく、しっかりと現実を見つめ未来を知ることで早いうちから対策を打つことができ心配は和らぐ。
決して臭いものに蓋をしてはならない。


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