日露戦争で偶然にも日本が勝利したことで日本は自らの軍事力を過信し、その傲りから第二次世界大戦へ突き進んでしまう。そして戦略よりも精神論で戦い続け元寇襲来時のように神風が吹くと願ったが、結局、日本は多くの犠牲を払い敗戦した。
戦後、日本は焼け野原から奇跡の復活を果たし経済大国へと急成長しバブル経済に沸くが、バブルが弾けた後も、日本は自らの経済力を過信し、その傲りからグローバル化の波に乗り遅れ、今では先進国と言えないほど落ちぶれている。
コロナ禍にある現在、先進国では新型コロナウィルスのワクチン接種は進み、徐々に規制も緩和され出口が見えてきているが、日本ではワクチン接種は遅れワクチン接種率は先進国の中で最も低く緊急事態宣言は今も発令されたままだ。そして来月予定している東京オリンピックは開催するのか、しないのか、今も揺れている。
また日本の政界を見渡しても相変わらず贈収賄など金銭問題が蔓延っており、未だに忖度など妙な慣わしが強く、政界や官僚はもちろん、企業でも上司の顔を伺いながら仕事を行う文化が根付いている。日本人は一体、誰のために仕事をしているのだろうか? 日本は昔と何も変わっていないように思える。
先週、改めて映画「連合艦隊司令長官 山本五十六」を観た。
山本五十六は新潟県長岡市の出身で中学を卒業後、海軍兵学校に入学し日本海海戦に参加した。その後、アメリカ駐在武官としてアメリカに渡り英語を学ぶためハーバード大学に留学し、欧米諸国を巡ってワシントン軍縮条約後の各国の実態を視察している。
世界を見聞した山本五十六は資源や国力に大きな差があるアメリカと戦争になれば日本は敗戦し国が滅びると考え、アメリカとの戦争を避けるために奔走する。しかし当時の政府と軍、それに日本世論は日露戦争に勝利した傲りから戦争へ傾倒し、ついにアメリカとの戦争に突き進んでしまう。
その激動の中、皮肉なことに山本五十六は連合艦隊司令長官に任命され、真珠湾攻撃を敢行しアメリカ戦の指揮を執った。しかし山本五十六はアメリカと講和による早期終戦を望み、そのことを念頭に作戦を立てている。
映画では役所広司演じる山本五十六が、戦争を煽る玉木宏演じる若い新聞記者にこう語る。
「目と耳と心を大きく開いて世界を見なさい」
これは日本の若者に井の中の蛙ではなく、小さな島国の日本を飛び出し世界を見聞し、正しい歴史を学び、正しい未来を築いてほしい。そして同じ過ちを繰り返すことなく誠実で強い日本を築いて欲しい。
この言葉は山本五十六が未来の日本人に向けたものだろう。