5月2日の夜、自宅近くで起きた交通事故に進展があり、テレビのニュースで続報が伝えられた。ニュースでは事故現場近くにあった防犯カメラの映像が流れ、道路を横断する自転車に乗った少年に猛スピードで走ってきた車が衝突する瞬間が映っており、少年はその衝撃で15メートルほど飛ばされたと言う。また警察の調べでは加害者は制限速度50キロの道路を倍の100キロ近いスピードで車を運転し少年を跳ね死亡させたとし、過失運転致死の疑いで逮捕したと言う。
僕は事故を目撃していないが自宅でクラクションとタイヤの摩擦音、それに大きな鈍い衝突音が聞こえたので、スピードは随分出ていたと想像していたが、まさか一般道を100キロのスピードで走るとは無謀で自殺行為だと驚いた。
僕の車には衝突を回避するための自動ブレーキや、自動でハンドルを切り衝突を回避する機能が装備されているが、その機能は運転スピードが40~50キロが限界のようで、それ以上のスピードが出ていると衝突を回避することは難しい。加害者が運転していた車はベンツだったので事故を回避するための装備は付いていただろうが、100キロ近いスピードでは衝突を回避する機能は作動しなかったのだろう。彼が制限速度を守っていれば自動ブレーキなどの衝突を回避する機能が働き、衝突しても少年は死に至ることは無く軽傷で済んだのではないだろうか。
これから車の技術はさらに進み安全性は高まるだろう。しかし車を運転する人間が交通ルールを無視し乱暴で無茶な運転を行えば、進歩した技術は生かされることはない。
僕も若い頃に無茶な運転をして電柱とガードレールにぶつかる事故を起こし、購入したばかりの車を廃車にした苦い経験がある。しかも初回のローン返済日が来る前に廃車になったので、車は無いがローンの返済が始まった。ローンの期間は3年でボーナス払いも利用していたので、ボーナスは右から左にローンの返済に消えた。あの時の事故は今でも夢に出てくることがある。交通事故は人身事故でなくても起こした人間は後悔する。
僕は事故現場で加害者と一言だけやり取りがあった。事故現場で呼吸の止まった少年に僕が心臓マッサージをしていると、加害者が僕に心細い声で話し掛けてきた。
「助かりますかね?」
「わかりません!」
たったそれだけの会話だったが、彼は途方に暮れた様子だった。