久しぶりに自転車に乗り近所の店に出掛け自転車を降りると、太腿に痛みがあったので直ぐに運動不足だと感じた。事務所で仕事をしていた頃は自転車で通勤していたので多少運動量はあったが、テレワークを始めて2カ月が過ぎQ次郎との散歩だけでは運動量が足りないようで、体力は落ちお腹周りも緩んできた。そこで近所のスポーツクラブに入会しパーソナルトレーナーを予約した。
スポーツクラブデビュー当日は予約したパーソナルトレーナーとの時間まで、別の女性トレーナーが僕の筋肉量や脂肪を測定し施設を案内してくれた。そして施設の案内が終わる頃、その女性トレーナーに無線が入った。彼女は手違いがあり予約していたトレーナーがまだ出社してないと言う。
「えっ、すっぽかされた?」
「いや何かの手違いのようで…」
「僕が電話で予約をした時、そのトレーナー本人が電話に出て予約したんばい。信じられん。忘れとったい…」
「大変申し訳ございません。後ほどそのトレーナーから連絡させますので、改めて時間を調整してもらえませんか?」
「そのトレーナーと会ったこともないし、別にそのトレーナーじゃなくていいんやけど。あなたの今手が空いとるなら、あなたで良かよ」
「私は今から別の方のレッスンが入っていますので…」
「じゃー、僕は今日帰ります」
「後ほど本人から電話させますから、大変申し訳ございませんでした」
彼女はそう言いながら深々と頭を下げた。
その後、呆れたことにすっぽかしたトレーナーから電話は無かった。僕は別のトレーナーを改めて予約するためスポーツクラブに電話を掛けると、電話に出た相手は僕をすっぽかしたトレーナー本人だった。
「あんたすっぽかしておいて電話もよこさんとはどうなっとると?スポーツマンやろ、ちゃんとせんといかんやろ!」
「今日はレッスンが多くてバタバタしてまして…。今、電話を掛けようとしてたんです」
「もうよか。あんたにどうしてもお願いしたいわけでもないし、明日、手の空いたトレーナーはおるね?」
僕は別のトレーナーを予約し翌日スポーツクラブに出掛けた。スポーツクラブで僕を待っていたのは、昨日、深々と頭を下げた女性トレーナーだった。
「昨日は大変申し訳ございませんでした。挽回しようと昨日測定した数値でトレーニングのメニューを作ってきました。直ぐにでもトレーニングに取り掛かれます」
「そーね。そりゃ~ありがたい」
「それでは、張り切って行きましょう!」
彼女はマイナスを取り戻そうと丁寧に指導してくれたので、次回のトレーニングも彼女にお願いすることにした。数カ月もすれば運動不足も解消され、緩んだお腹は引き締まってくるだろう。楽しみだ。