実家を売却するために9月から実家の片付けを始め10月末までには終わらせる計画だったが、今月に入っても一向に終わらない。実家は7LDKと大きく、しかも収納スペースも広かったので親父とお袋は物を捨てずに大切に取っていた。親父のスーツだけでも50着以上あり、結婚した頃から全てのスーツを取っていたとお袋は言う。また驚くことに親父とお袋の小学校の頃からの通信簿や働いていたころの給与明細、また貰った年賀状までしっかり取っていたので驚いてしまった。
片付けは処分する物と残す物、それに中古の買取り業者に持っていく物に分けた。お袋は家にある物を買取ってくれるのか疑心暗鬼だったが、僕が買取ってもらえそうな物を業者に持っていき換金したお金をお袋に渡すと、お袋は驚いて随分喜んだ。そしてお袋の心に火が付いた。
「へー、何でも買取ってくれるんやね~びっくりした」
「何でも買取るわけやないばい。中古でもニーズがある物やないと買取らんばい」
「そうね。この壷は売れんかね?欲しい人はおるよ」
「それはニーズがないやろ!」
「わからんばい。骨董屋さんに持って行ってみてくれんね?」
「それは骨董品やないやろ。ただの壷やんか!」
「持って行ってみらんとわからんやろ!」
「買取ってもらえそうなものは随分持って行ったけん、残っとる物は捨てるばい。車に積むのも一苦労やしガソリン代も掛かるとばい。家にある物を買取ってもらって換金することが目的やないやろ。全然、予定通り進まんやんか!」
「この、バカ息子!!」
こんな調子で僕が拒否するとお袋の口調は荒くなる。そのやり取りを聞いていた妹が仕方なく助け舟を出した。
「なら、私と一緒に買取り業者に持って行こうか?」
「ネットで写真付けて売ったら?」
僕が妹に言うと梱包やら発送に手間がかかると言う。
それ以降、お袋は買取ってもらえると思った物を妹と一緒に業者に持って行った。何度も何度も…。親父が集めていたネクタイにネクタイピン、食器、鍋、ぬいぐるみ、人形…。そしてお袋と妹は何度も肩を落とし、持って行った物を抱え戻って来た。しかしお袋は諦めずに妹と買取業者に出掛ける。
いつのまにか片付けが買取業者で換金することが目的になってしまった。
一体いつになったら実家は片付くのだろうか…。
written by モンコ