先日親父の見舞いに出掛けた。親父が入院している病院では新型ウィルスの感染対策として、見舞いは家族のみ1カ月に1度で、1度の見舞いに2人までと厳しく制限されており、面会時間は30分と短い。そのため家族で毎月ローテンションを組み親父の見舞いに出掛けており、僕が親父を見舞うのは3か月ぶりだ。
昨年の夏、親父は家の中で転んで足を痛め入院した。親父は順調に回復していたが、入院先の病院で嚥下障害による誤嚥で肺炎を引き起こし、昨年11月に高熱のため救急病院に転院した。一旦、肺炎は収まったが、その後も嚥下障害により肺炎を繰り返し、食事を取ることができず点滴と鼻からの経管栄養で生きながらえている。
鼻から経管栄養をすることは親父が苦しいだろうと、胃に直接穴を開けチューブを通す胃ろうを医者と検討したが、胃に穴を開ける手術に親父の体力が持たないだろうと医者が判断し、胃ろうを断念した。親父は痰が多く出るため1時間に2度、痰を吸引し取り除かないと喉に詰まらせるので自宅で介護することができない。
3か月ぶりに親父を見舞うと、僕のことは理解したが眠たいのか、直ぐに眠ってしまう。
僕は親父の体を軽く揺すって話しかけた。
「親父、元気ね?」
「あー…」
「今、世界中に新しい伝染病が流行っとるけん、なかなか見舞いに来れんとよ。ごめんな!」
「あー…」
「早く元気になったら温泉に連れて行くけんね」
治る見込みのない親父を少しでも元気づけるため、僕はそう伝えた。そして親父の頭を撫で足をさすった。親父の足は骨と皮だけで親父の足首を握ると僕の手首より細かった。こんな状態で生きてことを果たして親父は望んでいるのだろうか…。
以前、テレビでライオンの群れを数年追いかけるドキュメンタリー番組があった。数年が経ち、その群れのリーダーだったライオンは高齢のため自ら狩りができなくなった。するとそのライオンはリーダーを譲り、一頭静かに茂みの中に入っていった。そのライオンは寝そべったまま数日間水も食事も取らず、静かに死んでいった。
親父はお袋との間で延命治療をしないとルールを決めていたが、そのルールは心肺停止後のことで、もっと細かくルールを定めておかなければならなかったように思う。例えば自ら食事を取れなくなった時やベッドに寝た切りになったときなど…。親父もドキュメンタリー番組のライオンのように静かに死を迎えたいのかもしれない。
written by モンコ