今週、数年ぶりに大型台風が九州を襲った。この台風は気圧が925ヘクトパスカルと過去に甚大な被害をもたらした伊勢湾台風と勢力がほぼ同じだったので、僕は台風にしっかり備えることにした。懐中電灯、ランタン、カセットコンロを準備し、窓ガラスが割れ飛散しないように窓を養生した。
台風が来る前日の朝、僕は養生テープを購入するためホームセンターへ出掛けた。ホームセンターの駐車場は既に車が一杯だったが何とか車を止め店に入ると、レジには懐中電灯や養生テープなどを求める客が列を作っていた。急いで養生テープの売り場に向かうと、既に養生テープは品切れだったので別のホームセンターに急いだ。しかし別のホームセンターでも養生テープは既に売り切れていたので、僕は仕方なく自宅戻った。そして自宅にあるもので窓を補強できないかと考えていると、台所にあったサランラップが目に入り、サランラップを窓前面に張り付け、その上にガムテープで補強することを思いついた。
全ての窓ガラスを補強し、ベランダにある植木鉢などを部屋に入れ、最後に愛車を守るため頑丈な建物の有料駐車場に愛車を移動させた。皆、考えることは同じようで頑丈な建物にある駐車場はマイカーを避難させるためどこも一杯だった。僕は運良く駐車場を確保することができ、台風対策で忙しく慌しかった1日は終わった。
深夜、「ゴォー」と響くような強い風の音で目が覚め、時計を見ると午前3時半。カーテン越しに暴風で今にも割れそうな窓から恐る恐る外を見ると、街路樹が折れそうなほど大きく揺れており、部屋から見える川の水面は強風に煽られ雨と一緒に水しぶきが舞っている。リビングでテレビを付けると台風は福岡に最接近していた。もう少し寝ようと床に入ったが大きな風の音で眠ることはできず、結局、朝まで起きていた。テレビには倒壊した家屋や鉄柱の折れた電灯、それに風に飛ばされる看板など台風被害の映像が幾度となく流れていた。朝7時を過ぎると風は徐々に収まり9時には随分と落ち着いて来た。その日は全ての学校は休校で交通機関も計画運休しており多くの企業も休みだったので、サランラップを貼った窓からは車も人影も全く見えなかった。
子供の頃は親の台風の備えを手伝うこともなく、停電すると懐中電灯や蝋燭の明かりで一晩過ごすことが日常とは異なりワクワクしていたが、今は自ら台風の備えをするので台風が鬱陶しく思う。台風が去り、窓ガラスに貼ったサランラップとガムテープを剥がしていると、母がこう言った。
「そのままにしとけばいいのに。また直ぐに台風は来るよ!」
台風の備えも手伝わず、慌しく動く僕を他人事のようにのんびり見ていたお袋は、ひょっとすると台風が来ることを楽しみにしているのかもしれない…。
written by ダニエル