What's NEW
ARCHIVE
お寺の値引き
2020年02月28日

「墓は親父が建てたんで、無宗教の私が墓の管理費を払うのはおかしいでしょ!」

親父は無宗教と言い張り、祖父母の建てた墓のある寺の年間管理料の支払いを数年前から断っていた。困った住職は親父の弟で僕の叔父に連絡を取り、年間管理費の支払いの催促をしたそうだ。親父と叔父の間で以前から管理費の取り決めがあったようで、親父に年間管理料を支払うよう話してくれと叔父から僕に連絡があった。しかし今は入院して意識もままならない親父が理解するはずもなく、仕方なくお袋を連れて寺の住職に会いに出掛け、延滞していた墓の年間管理料を支払った。そして住職と今後のことについて話し合った。

「うちの母はクリスチャンなので、こちらのお墓には入りません。父は無宗教ですが、夫婦は同じ場所に埋葬されるべきだと言うので、母と一緒に教会の納骨堂に入るつもりです」

僕が住職にそう伝えると、

「それじゃ、このお墓はあなたが守っていきんしゃると?」
「僕も無宗教なので将来は亡くなった犬と一緒に樹木葬にしようかと考えています」

それを聞いて住職は少し顔が曇った。

「それじゃ~、墓はどうするかね~。実はうちにも納骨堂がありますけん、お爺ちゃんとお婆ちゃんはそこに納めて永代供養ば考えたら、どうでっしゃろ?」
「こちらに永代供養をお願いしたら費用はどのくらい掛かるんですか?」

住職は納骨堂の料金表を持ってきた。

「一人分で20万やけん、お爺ちゃんとお婆ちゃんの二人やけん40万円ですな」
「へ~、結構掛かるんですね?」
「ば、ばってん、生前お爺ちゃんには世話になっとったけん、値引きって言うのも変やけど二人で30万でよかですよ。今の時代は墓に入るより納骨堂に入って永代供養する方が多くて、葬儀や墓も簡素化する時代で寺も大変なんよ」
「寺も値引きをするんですね…」

苦笑いをする住職に墓仕舞いをするための墓の撤去費用の見積もりお願いし、納骨堂の件は検討する旨伝え寺を出た。

その後、再び寺を訪ね住職に祖父母のお骨を納骨堂に移し永代供養してもらうことをお願いし、住職から墓仕舞いするため墓を撤去費用の見積もりを見せてもらうと、結構な金額だったので、もう少し何とかならないかと相談すると、価格は若干下がった。寺の価格はあって無いようなものだと僕は思った。
少子化が進み生活様式が多様化する日本では、お寺の運営も随分影響を受けているようだ。

written by 彦之丞


What's NEW
ARCHIVE