愛犬Q次郎は先週末、初めて散歩に出掛け地面に立った。Q次郎にとっては人類が初めて月面着陸し月に立った時のようなインパクトで、目の前に広がる世界に驚いただろう。
Q次郎をそっと地面に下ろすと、緊張した面持ちで直ぐに伏せた。リードを軽く引っ張っても立ち上がらず、リードを強く引くとQ次郎は伏せた状態で引きずられる。
「Q!怖くないけん、さぁ、行くよ!」
僕がしゃがんでQ次郎に声を掛け手招きすると、Q次郎は匍匐前進で50センチほど進む。何度もこの動作を繰り返すし、やっとQ次郎は地面に立った。
そこに自転車がベルを鳴らしながら走って行ったので、Q次郎は驚いてまた伏せてしまった。Q次郎は初めて見たる自転車をどう思ったのだろう。
「な、な、なんだーあれは…」
次に人が歩いて近づいて来たのでQ次郎は座ってその人に思いきり尻尾を振った。しかしその人はQ次郎を無視して通り過ぎて行った。
Q次郎は僕の友人など数人に会っており、皆、Q次郎に声を掛け頭を撫でてくれるのだが、今通り過ぎた人はQ次郎を無視して通り過ぎて行ったので拍子抜けしている。
「あの人、無視しとる…。何で優しく声をかけて頭を撫でてくれんとかいな?」
そうしていると、後ろからスーツケースをゴロゴロと引いてくるカップルが近づいて来る。Q次郎はその音が気になるようで、歩きながら何度も振り返り立ち止る。
徐々にスーツケースを引いたカップルが迫って来て、スーツケースの車輪の音は大きくなり僕等を追い抜いて行く。
Q次郎はまたその場に伏せてしまった。Q次郎はスーツケースが何か動物に見え、主人と散歩しているように思ったのだろうか(笑)
しばらくすると、遠くからハーレーだろうか、大きなバイクの音が近づいて来る。Q次郎は僕の足元に擦り寄ってきて僕の足に飛び付き抱っこをせがむ。
Q次郎を抱っこするとバイクが轟音を響かせ横を通り過ぎて行った。
Q次郎は僕にしがみ付き、顔が引きつっていた。
「…」
その日はQ次郎が散歩に馴れることが目的だったので30分ほどで自宅に戻った。部屋に戻るとQ次郎は安心して部屋中を足り回っていた。
「お前は内弁慶やなぁ~」
(ちなみに内弁慶のQ次郎は、先日、「メトロ・ゴールドウィン・メイヤー」が配給する映画のオープニングで、ライオンが出て吠える声に飛び上がって驚いていた)
Q次郎の冒険は始まったばかりでまだ他の動物や昆虫などに出会っておらず、海も川も見たことがない。
これから初めてのものを見た時のQ次郎のリアクションが楽しみだ。
written by ゴンザレス