金融庁の金融審議会がまとめた報告書「高齢社会における資産形成・管理」(2019年6月3日発表)によると、「人生100年時代」に95歳まで生きる場合には夫婦で約2,000万円の貯蓄が必要と指摘した。その根拠として65歳の世帯で毎月の年金の平均受取額は約20万円、それに対して平均支出額は約26万円だ。つまり毎月の赤字額は6万円で年間72万円の赤字となる。65歳から95歳まで30年あるので72万円×30年=2,160万が必要になり約2,000円が必要になると金融庁は指摘している。
金融庁のこの発表に多くの人が将来の不安を感じたようで、報道番組のインタビューなどでは「そんな大金を貯めることは無理!」と、みんな口を揃えて政府を批判していた。
老後の必要資金を政府がわざわざ発表するとは、将来の老後資金について考えていない人があまりに多いからなのか、それとも年金を当てにせず自助努力をしろというメッセージなのだろうか。いずれにしても政府が試算した金額は65歳以上の方の平均収支から計算されており、この中には住宅費用が含まれておらず、前提として65歳までにマイホームのローンを支払い終えた人の金額だ。そのため住宅ローンを完済していない人や賃貸住宅で生活する人はさらに家賃が必要となる。またこの試算には家の修繕費などは含まれておらず、さらに医療費などの突発的な費用も含まれていないため、実際の費用とは大きく乖離しているだろう。
金融庁の指摘は多くの人が老後になって慌てることのないようにと、親切心からだと僕は捉えているが、複数の老後の生活タイプ別に老後資金を提示するなど、もっと丁寧に試算する必要があるのではないだろうか。
国は企業に70歳まで雇用延長を要請しているが、雇用年数が長くなることで退職金はこれからさらに減額されることになり、しかも将来の日本の実質賃金は今より減り、逆に税金や社会保険費は増えるので、早い時期からライフプランを作ることが必要だ。
さらに一度作ったライフプランではその後の長い人生で通用しないこともあり得るので、経済の変化や税制改正に合わせライフプランを見直し、時代に沿って最適化しなければならない。
ひと昔前の老後は今まで頑張って働いてきた苦労から解放され、悠々自適に趣味など自分の楽しいことに時間を費やし旅行に出掛けることもできたが、これからは死ぬまで苦労から解放されることはないのかもしれない。
仕事好きで「一生現役」と、やたら口にする元気な高齢の方もいるが、これからは元気でなくても皆、「一生現役」になってしまいそうだ。
written by ジェイク