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投資は75歳までに!
2019年05月17日

親父が信頼していた証券マンが挨拶もなく突然退職し、次の担当者が引継ぎのため親父に連絡をしてきた。親父は退職した証券マンを随分と信頼しており彼に色々相談しながら投資を行い、彼からの無理な相談にも付き合っていたようで、彼が挨拶もなく辞めたことにショックを受けた。そこでこの機会に株式投資を全て止めることにし、そのことを伝えるために証券会社に出掛けた。以前から高齢の親父に株の取引を勧めていた証券会社の担当者のことをお袋は良く思っておらず証券会社に文句のひとつでも言ってやろうと、お袋も同行した。

証券会社では親父とお袋は応接室に通され、次の担当者とその上長が同席した。親父は今後取引を止め所有している株の全て売却することを伝え、その後にお袋はこう切り出した。
「あなた方はこんな高齢で認知症の恐れのある人に株の売買を勧めるとは少しおかいしいんじゃないんですか?」
「えっ、認知症?そうなんですか?」
「認知症の恐れがあると医者に言われています。昨年、主人が入院した時も前任の方は病院まで電話してきて取引の話を持ち掛けるし非常識にもほどがあります!」
「入院?」
「主人は昨年転んで硬膜下出血で入院してたんです!」
「そ、そうなんですか?前任者が突然会社を辞めたので何も聞いておらず引継ぎができてなくて…。すいません。」
「前任の方は不正とか何か問題があったんではないですか?」
「それは全くないんですが。ところでご主人さまに認知症の恐れがあるのであれば、株の売買は一旦停止させていただきます。今はコンプライアンスなど会社が煩くて認知症の方に株の取引をすることは社会的にも大きな問題になっているんです。だから当社では高齢で認知症の方には取引を停止させていただいております。」
「停止?」
「何も聞かなければよかったのですが聞いてしまった以上、保有の株式を売却されるのであれば、親族の方に後見人になって頂き、その方と相談の上、法的に処理をしなければなりません」
「…」
親父とお袋は墓穴を掘ってしまった。
その日、お袋から連絡があり証券会社に僕が改めて会いに行く羽目に。

証券会社で親父が医者からは認知症の恐れがあると言われただけで、その診断は出ていないことを僕は担当者に説明した。その結果、親父と担当者が再度面談し、親父の会話や思考が正常なのか判断したうえで本社に判断を仰ぐことになった。

「だいたいそんな歳になって、株の売買なんかするけんやろ?」
僕が親父に言うと、親父はしょぼくれていた。
「あんたが頼りやけん!」
母がそう言うので僕が今後処理することになり、証券会社に連絡し親父の取引履歴を郵送してもらった。そして親父の取引履歴を見て驚いた。
「えっ、こんな金額を売買しよったったい(笑)塩漬けしてもいいやんか…」

アメリカの投資家バフェットじゃないんだから、75歳までに投資は終わらせるべきだろう。

written by 彦之丞


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