先日、モーツアルトが亡くなる直前に生涯最後に作ったオペラ「魔笛」に出掛けた。このオペラはベルリンのオーケストラによる迫力のある音楽、オペラ歌手の美しい歌声、プロジェクトマッピングによる幻想的な映像が融合した斬新的なステージだ。
僕はオペラに出掛けるのは初めだったので、オペラを理解することは難しいと考えていたが、オペラのストーリーが映像で表現されており、日本語訳もあったので「魔笛」の世界にスムーズに引き込まれた。時代を超えて多くの人に愛される上質な芸術に触れることで感性は豊かになる。
最近、テレビを見ると感性や教養を豊かにするような番組は全く無い。毎日、今のテレビ番組に触れているとバカになってしまうのではないかとさえ思ってしまう。特にバラエティー番組は暇つぶしにもならないし、報道や情報番組でお笑い芸人が司会を務める番組は視聴者をバカにしているのではないかと思ってしまう。
無知なお笑い芸人に評論家などが知識や常識を教え、視聴者をまるで無知なお笑い芸人と同じように考えているのではないかと感じる。しかも訳の分からない〇〇評論家と名乗る人間がやたら多すぎる。軍事評論家、教育評論家、ネット評論家、お笑い評論家、アイドル評論家…彼らは一体何者だろう。
慌しく過ぎる毎日の生活の中で、少しでも上質で豊かなものに触れる時間を大切にしないと本当にお笑い芸人のようになってしまうのではないだろうか。質よりも視聴率を重視した番組作りは日本人の感性を破壊している。ある独占企業による視聴率調査データにも疑問はあるが…。
またウケ狙いのインパクトだけを追求したCMもやたらと目に付く。インタレストとインパクト重視で多くの企業が注目されるCMを制作し投下するので、その企業の上質なブランドイメージを醸成することはできない。またCMで話題を創出しネットで拡散することを狙っているため、CMのクオリティーと同レベルの人にしか拡散されない。いずれにしてもテレビ番組がつまらないので、テレビ媒体に接触する人は年々減少している。
広告業界に数十年身を置いているが、広告業界やマスコミ業界ほど不思議で変な業界はないように思う。ひと昔前の広告業界には知的で感性の豊かな人はいたが、今はあまり見なくなってしまった。
written by チュグアナ