週末に以前勤めていた会社の上司が来福し数年ぶりに会食をした。
以前、彼は東京から福岡に単身赴任しており、僕が広告の業界で駆け出しの頃にマーケティングなどの知識、それに論理的に思考することなど多くを教えてくれた。
また公私ともに随分とお世話になった方で、僕の人生において良い影響を与えてくれた一人だ。(悪い影響を与えるアホな上司もいたが…)
彼に随分とお世話になったので、僕は最大級のおもてなしをしようと福岡で名の通った一流の店を予約した。お互い年齢を重ねているので、そうお酒を飲まないだろうと思っていたが、彼が河豚のひれ酒を注文したことでお互いの肝臓にエンジンが掛り、日本酒を随分と頂きほろ酔いに。
彼は料理の一品一品に舌鼓を打ち満足していたので、僕は多少恩返しができたと嬉しく思った。
過去の記憶は駆け足で遠くへと過ぎて行くが、上質な時間と旨い酒は過去の記憶や意識を蘇えらせてくれるのだろう。
翌朝、目を覚ますと、ふと当時のことを思い出した。
彼が単身赴任を終え東京に戻ることになり、僕は送別会の幹事を引き受けた。
まず彼の送別会のポスターを制作し、取引会社にポスターに社名を告知するので協賛してほしいと脅し、協賛品を提供してもらった。
更に取引先の制作会社も脅し、彼を囲んだたくさんの思い出の写真を映像にしてもらった。
送別会当日はソファー付きのリムジンバスをチャーターし、馴染みの飲食店にテイクアウト用の料理を用意してもらい、その料理と酒をリムジンバスに積み込み車内を飾りつけた。
最後にリムジンバスの外のフロントに彼の名前の入った横断幕を結び付け、送別会の準備は整った。
そしてリムジンバスに仲間全員が乗り込むと彼との待ち合わせ場所へ向かった。
待ち合わせ場所で彼は横断幕がはためくリムジンバスを見て驚いていた。
彼がリムジンバスに搭乗すると走るリムジンバスの中で宴会が始まった。
大騒ぎのリムジンバスはトワイライトの福岡の湾岸道路を走って行く。
リムジンバスの中ではいくつかイベントが行われ大いに盛り上がった。
そしてリムジンバスが帰路に向かうと、制作していた映像を車内のモニターで放映した。
確か映像のBGMはイーグルスの「ラストリゾート」だったと記憶している。
その映像を見ながら彼は感極まったのか、涙をにじませていた。
最後にリムジンバスのフロントに結び付けていた横断幕を彼にプレゼントした。
彼はあの横断幕を今でも持っているだろうか?次回再会することがあれば尋ねてみよう。
上質な時間と旨い酒でないと過去の素敵な記憶を思い出すことはできないのかもしれない。
written by マックス