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初めての地上
2016年07月29日

ここのところ毎日、蝉の鳴き声で目を覚ます。蝉は地上での生活は数週間程度で、多くの時間を暗い地中で暮らしている。初めて見る地上の世界はどのように見えるのだろうか。
蝉の声は子孫繁栄のためメスを誘うためのものなのだろうが、僕には最後の断末魔のように聞こえる。
8月は終戦記念日があり、多くのメディアで昔の世界大戦の様子が取り上げられる。そのためか、この時期の蝉の声はどことなく切なく感じてしまう。

今の世界は第一次世界大戦前の時代に良く似ていると言う。
イギリスでは移民問題に端を発しEUを離脱することになり、アメリカでは大統領候補者の演説で、国境に壁を作ると声を上げトランプが躍進している。また中国は世界秩序を完全に無視し、時代錯誤な考えで自国の国益を追求している。
今の世界はグローバルに繋がっているにもかかわらず、この流れに逆らい内向的な考え方をする国家や人が増えており、自国を中心に考える右翼的な時代へと移っているように感じる。

時代の流れが振り子のように左右に振れているのだろうか。
世界を大きく巻き込んだ先の世界大戦から70年余りが経つが、平和な時代から戦争の時代に振り子が大きく振れているようだ。

蝉の声はあと数週間で聞こえなくなる。彼らは次の世代へと命を繋ぎ、短い地上での生活を終える。新しい生命は地中に身を潜め、暗く長い時間をそこで暮らす。
そして数年後、彼らは地上に姿を現し、初めて世界を見ることになる。
彼らの見る地上が焼け野原になっていなければ良いのだが。

written by ジェイク


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