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目利き
2014年03月14日

先日、水産業者を営む方と食事をする機会があった。水産業者と言っても魚屋さんだ。以前は店頭販売をしていたそうだが、店の近所にスーパーマーケットができ、お客が激減したそうだ。そこで店頭販売を止め、飲食店などに魚を卸す業態に変えたそうだ。

彼は学校を卒業後、鮮魚市場の中にある仲買の会社に就職した。市場の朝は早く、仕入れた魚の積み下ろし作業が中心で、自宅に帰る頃にはヘトヘト。しかも風呂に入っても体に付いた魚の匂いが取れない。当時、市場がまるで刑務所に感じたと言う。あまりの過酷な仕事だったので3日で辞めようと思ったそうだ。
しかし先輩の紹介で就職したこともあり、先輩の顔を潰すことできずに仕方なく数年その仕事を続けた。その後、転機が訪れ彼は独立した。

漁師は魚を獲り、その魚を市場に持ち込む。彼はその持ち込まれた大量の魚の中から鮮度や質を見極め仕入れる。仕入れた魚は事前に注文を受けていたお得意先に納品する。彼がこの仕事で何よりも喜びを感じる瞬間は、お得意先から「旨くて良い魚だったよ!目利きが良いね!」そう言われる時だそうだ。

「目利き」は長年真剣に仕事に向き合い、その蓄積された経験からもたらされる勘だと思う。今は昔と比べて寿命も2倍近く延びている。そのためか人としての成長も昔に比べ遅くなったように感じる。
「石の上にも3年」と言うが、現代では「石の上にも6年」ということになるのかもしれない。6年くらい真剣に仕事に向き合い下働きをしなければ「目利き」をする力が身に付かないのだろう。

「目利き」は僕らの業界でも大切だ。
「目利き」と言う言葉はつくづく良い言葉と改めて思った。

written by 彦之丞(ひこのじょう)


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