僕の住むエリアは大通りを一本中に入ると一方通行の狭い道が多く、周辺の老朽化した家は売りに出され、建て替えられた新しい家が目立つ。不動産価格の上昇からか、住宅メーカーや不動産会社は老朽化した家を壊し、土地を小さく区分して販売しているようで、新しく建った家はどれも小さく隣家と近いうえ庭も無い。折角、憧れの家を購入したのであれば、小さくても構わないので庭が欲しいものだが…。
ところで福岡市は2005年に発生した福岡県西方沖地震をきっかけに、中心部の天神エリアの老朽化したビルの建て替えが検討された。しかし天神エリアは直線距離でわずか5kmの場所に福岡空港があり、航空法に基づき建築物の高さ制限で小規模なビルしか建てることができず、オフィスやホテル不足になっていた。
2014年、福岡市は国家戦略特別区域に指定されたことを受け、天神から半径約500m圏内を「天神ビッグバンエリア」と位置づけ、航空法に基づく規制の緩和や特例承認などエリア内の老朽化したビルを耐震性に優れたビルへ建て替えを促した。また広場や歩行者空間などの賑わいと憩いの空間を一連して整備する計画も同時に進めた。この取り組みでは福岡市が補助金を出すのではなく、規制緩和により民間投資を呼び込むことで、高機能な大型ビルの建て替えや、高付加価値のビジネス・企業を誘致することを目標にした。そして2016年に「天神ビッグバンボーナス(天神BBB)」を創設し、周辺ビルとの連続性や緑化などデザイン性に優れたビルを対象に、容積率緩和、テナントの優先紹介、周辺駐車場の優先利用などのインセンティブを付与した。
その結果、天神エリアは多くのビルの建て替えが進み、福岡市は当初、2024年までの10年間に約30棟の建て替えを目標にしていたが、目標を大きく上回る50棟のビルの建て替えが進み、天神エリアの景観が一変すること。試算によると延床面積は約1.7倍の757,000㎡で雇用者数は約2.4倍の97,100人に増加し、建設投資効果は2,900億円で経済波及効果は年間8,500億円に見込まれている。
僕は新型コロナの外出制限や在宅ワークに変化したことで、以前のように天神エリアにはあまり出掛けていなかったが、久しぶりに天神エリアに出掛けると、町の景観は以前と全く異なり、高いビルを見上げて迷子になってしまうほどだ。また女性向けのブランドショップや銘品店が増え、女性を中心に九州各県から福岡への人の流入は大きくなっているようだ。人口増加が見込める福岡市で庭付きの家を購入することは、今後、さらに難しくなるだろう。