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最後の晩餐?
2024年05月31日

五月晴れの心地よい天気が続いているが、沖縄は梅雨に入りし、そろそろ福岡も梅雨入りする頃だ。昨年、親父が亡くなり、葬儀の日は雲ひとつない五月晴れで、先週、親父の一周忌を行ったが、その日も五月晴れで雲ひとつなく爽やかな一日だった。まるで親父が空の上から笑顔で見守っているように思えた。

ところで親父が亡くなってから遺品整理や死亡後の手続きで慌しい日が続き、1年が長く思えた。親父は無宗教だったが、お袋はクリスチャンなので教会で親父の葬式を行い、一周忌の法要もその教会で行った。キリスト教では一周忌などの法要を「記念式」と呼び、参列者はお祈りを捧げ讃美歌を歌う。そして最後に牧師さんから「奨励」と呼ばれる参列者への励ましの言葉で締めくくられる。仏教の「説教」のように重く長い話ではなく、短く穏やかな話だ。

無事に親父の一周忌を終えた後、家族全員で食事をするため福岡ドーム横にある高層のホテルへ向かった。このホテルは地上123mの最上階にレストランがあり、天国に一番近いレストランで家族揃って食事をすることがお袋の希望だった。レストランの窓からは福岡市の街並みや玄界灘が望め、席に着くと海に沈む夕陽が伺える。テーブルに親父の遺影を置きドリンクが配られると、お袋が献杯の音頭を取った。

「お父さん、皆、集まってくれたよ。いつも見守ってくれてありがとう。それでは献杯!」

お袋の声に合わせ、皆、グラスを掲げた。続けて僕が一言。

「今日は親父の一周忌の食事なんやけど、お袋は高齢で弱ってきとるけん、心残りにならんよう綺麗な景色を眺めながら最後に皆で食事をしたいということで、ここで食事をすることになりました。今日は最後の晩餐やね」

僕がそう話すと、お袋が孫に言った。

「こんなレストランで食事をすることはないやろ?これも勉強やけん。井の中の蛙にならんように、良いものを見てそして良いものに触れて、視野を広げて生きんといかんよ。もうこうやって皆で食事をすることはそうないやろう。今日は楽しみましょう!」

その晩、お袋と妹家族はそのホテルに宿泊し、夜遅くまで部屋からの夜景を楽しんだそうだ。

翌日、お袋はまるで自分の役割を果たしたようで満足していた。最後の晩餐か…。高齢のお袋はあと何度食事をすることができるのだろうか?好き嫌いの多いお袋に少しでも好物を食べさせてあげよう。


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