2年前の7月9日、午前3時半に愛犬Q太郎は天国へと旅立った。その日の朝、僕はQ太郎がかかりつけだった動物病院に連絡し、Q太郎が死んだこと、それに今までのお礼を先生に伝えた。そして動物病院の先生に紹介してもらったペット霊園に電話を入れた。僕は死んだQ太郎の傍に少しでも長くいたたかったので遺体が腐敗しない日数を尋ねた。夏場だと発泡スチロールのケースに保冷剤を敷きその上に遺体を安置すると、3日は大丈夫と言うことだったので3日後に火葬の予約を入れた。それから3日間、僕は死んだQ太郎の横で過ごした。火葬の日、Q太郎が大好きだったペット用のキャリーケースに花を敷き詰め、その上にQ太郎を寝かせ火葬してもらった。
Q太郎は毎日のように僕と同じベッドで眠り僕の隣で食事を取り寝食を共にしていたので、僕はペットロスで心が重い毎日を過ごした。そんなある日、「僕のワンダフル・ライフ」という映画を観た。その映画は犬と飼い主の強い絆を描いたもので、主人公の子犬が死にかけたところをある少年に救われ、その少年に飼われることになる。飼い主の少年と子犬はいつも一緒に過ごしお互い成長するが、犬の寿命は人間より短く、やがてその犬は大人へと成長した飼い主に看取られ死んでしまう。しかしその犬は命を助けてくれた命の恩人である飼い主に会いたい一心で何度も転生を繰り返し、遂に初老になった飼い主に別の犬に生まれ変わり再会を果たす。
その映画を観て、僕は毎日のようにネットで犬の里親を探すサイトやブリーダー直販のサイトを閲覧し、Q太郎の生まれ変わりの子犬がいないか探した。僕が探していた犬はQ太郎が死んだ7月9日以降に生まれのQ太郎と同じミニチュアダックスだった。
そして8月下旬、僕はあるブリーダーのサイトに掲載されたミニチュアダックスの写真を見つけた。その犬は7月30日に生まれのブラック・タンのミニチュアダックスの子犬で、その子犬の写真の後ろには犬のおもちゃのぬいぐるみが映っていた。その犬のおもちゃのぬいぐるみは、僕が以前Q太郎に買ってあげたものと同じものだったので、Q太郎の生まれ変わりかもしれないと思いブリーダーに連絡を取った。そして僕はその子犬がいる兵庫まで出掛けた。
今、その子犬はQ次郎と名付けられ僕と寝食を共にしている。Q次郎はQ太郎とよく似ており元気で明るい性格だ。Q太郎の命日である今日、Q次郎と一緒に自宅にあるQ太郎の骨壺に手を合わせた。
Q次郎は僕の顔を見上げ首を傾げた。