最近、お袋は病院以外に外出することがないので、紅葉を見に行こうと誘った。
お袋は出掛ける前は億劫だとグズグズ言っていたが、いざ出掛けると晴天だったこともあり少し機嫌も良くなった。車の中でお袋は紅葉を見たあとは牡蠣小屋で焼牡蠣を食べようと昼食の話ばかりしていた。車で1時間ほど走り福岡の西にある紅葉の名所である寺を目指した。
寺に近づくと脇道のない一本道が大渋滞しており車は全く進むことはできなくなった。少し進むと道路脇に寺の関係者なのか男性が立っており、渋滞で停まっている車に声を掛けている。
「この先は2キロほど渋滞しており、お寺までは2時間ほどかかります。この先の少し広い道でUターンができます。それより先は道が狭くUターンすることができませんので、もし引き返されるのであればそこでUターンして下さい」
「えっ、2時間も渋滞しているんですか。天気も良いから皆考えることは同じか…」
結局、2時間も渋滞に巻き込まれることには耐えられないと、来た道を引き返し途中にあった地元の魚や野菜が豊富に揃っている生鮮市場に寄ることに。しかしそこも駐車場は満車で市場の中を覗くと多くの人で混雑しておりコロナの感染リスクを考え市場に入ることも諦めた。結局、紅葉も見ることも市場で買物もできずお袋はがっかりしていた。
諦めて自宅に戻る途中、お袋はどうしても牡蠣が食べたいと言い出した。
「前にお父さんと牡蠣を食べに行ったとよ。美味しかったっちゃんねー」
「牡蠣は少し早いっちゃないと、牡蠣はもう少し寒くならんとなかよ」
「わからんよ。ちょっと海沿いば探してみようや」
僕は仕方なく海岸沿いを車で走ることに。30分ほど車で走ると焼牡蠣の文字が書かれた看板の店を見つけた。その店はBBQの店で牡蠣も焼いて食べることができるようで、店の中に入ると殻付きの牡蠣や肉が冷蔵ケースに並んでいた。そして好みの食材を購入し案内されたテーブルの横にある炭焼きの網で食材を焼いて食べた。外出することに億劫だったお袋も牡蠣をたらふく食べることができ満面の笑顔を浮かべていた。
「あ~美味しかった。デザートは何ば食べようか?」
「…」
結局のところ女性はいつも花より団子のようだ。
これからお袋を外に誘う時は旨いものを食べに行こうと誘うことにした。
written by モンコ