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辛夷清肺湯
2019年10月04日

先月出掛けたカンボジアのボランティア活動で僕は随分と疲れ、体調を崩し風邪を引いてしまった。以前から風邪を引くと副鼻腔炎を引き起こしてしまうことがあり、今回は副鼻腔炎と扁桃腺も腫れたので病院に出掛け薬を処方してもらった。処方された薬を数日服用したが副作用による強い眠気と倦怠感で仕事に集中することがでず、副作用の少ない漢方薬に替えようと、漢方薬専門の薬局を訪ねてみた。
僕は漢方の専門薬局に出掛けるのは初めてで、恐る恐る中に入ると女性のスタッフが僕を部屋の奥にあるカウンターに案内してくれた。そして薬剤師の女性から1時間半ほど悩んでいる症状や現在の生活状況など聞かれた。質問の内容は食生活や水分の摂取量など細かく尋ねられ、さらに便の状態や回数、それに色まで質問されたので恥ずかしくなった。ヒアリングが終わり彼女は店の奥から分厚い漢方の辞典を持って来て、僕の今の症状に適している薬を調べた。

「辛夷清肺湯。あなたの今の体の状態からはこちらの薬がよろしいでしょう」
「辛夷清肺湯…」

漢方薬には粉末タイプと沸騰したお湯で煮だすタイプの2種類があるそうで、本来は調合された漢方薬をお湯で煮だしお茶として服用するそうだ。粉末タイプはそのまま服用するため手間がかからず携帯に便利だが、お湯で煮だすタイプと比べると効果が30%ほど低くなると言う。折角なので僕はお湯で煮だすタイプの漢方薬を処方してもらうことにした。この店は調剤薬局ではないので健康保険が使えず僕は価格が気にったので尋ねると、多くの漢方薬は1日分で600円~800円だと彼女は答えた。
僕が商品と価格を承諾すると彼女はガラス張りの漢方薬を調合する部屋に入っていった。その部屋には何百種類の漢方薬の原料が並べられ、見たことのないキノコや動物の角のようなものまであった。彼女は10種類ほどの原料を摺り、煮だすために原料をティーパックに入れた。代金を支払い服用の仕方と注意事項を説明し漢方薬を渡してくれた。

家に帰り、漢方薬の入ったティーパックを沸騰したお湯に30分ほど入れ煮立たせると、お湯は濃い茶色に濁った。これを洋服にこぼしてしまうと必ずシミになってしまいそうだ。香りは以前、嗅いだことのある薬草のような匂いで、その香りが家中に広がると、まるで魔女が妙な薬を作っているように思えた。そして出上がった漢方のお茶を恐る恐る飲んでみた。

「うわー!!」

余りの苦さに僕は声を上げてしまった。今までに味わったことのない味でとにかく渋く苦い。しかしどことなく癖になりそうな味で全身に染みわたるように感じる。初めて経験した本物の漢方薬は果たして効果はあるのだろうか?

「中国4,000年の歴史か。辛夷清肺湯…」

効果を信じて当分飲んでみることにした。

written by キムジー


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