常識は時代とともに変化し、いつのまにか非常識に変わっていく。
以前は飲食店で禁煙の店などはほとんど無く、どの店でも当たり前のように煙草は吸えた。またタクシーや電車はもちろん、飛行機にも灰皿が備え付けられており多くの人が煙草を吸っていた。今では逆にタバコを吸える場所を探さなければならないし、タバコを吸うことで肩身も狭い。
また以前は飲食店に入ると、とりあえずビールと決まって頼んでいたが、今ではノンアルコールビールやレモンサワーなどで乾杯する人も多く、率先して酒を飲む人はいなくなった。そして酒を強要することもなくなり町からは酔っ払いがいなくなった。昔を知らない今の若い人たちは今の時代が常識で、昔を知っている僕らは非常識になっていく。
先日、親しい取引先の方と馴染みの寿司屋のカウンターで一杯やりながら、僕がタバコに火をつけた。すると取引先の方は寿司屋のカウンターでタバコが吸えることに驚いていた。
「うちが禁煙にすると、店に来ないって言うんで、仕方ないんですよ」
店の主人は苦笑いしながらそう言うので、僕はこう言った。
「昔は良かったなぁ~」
「昔はよかったよな~」この言葉を口にする人はきっと時代の変化に上手く順応できずに、その変化に窮屈さを感じている人が使う言葉なのだろう。若い頃にこの言葉を耳にすると、「何を古臭いこと言ってんだ」と思っていたが、年を重ねると僕も同じ類の人間だった。
もうすぐ新元号に変わり、また時代が変化し新たな常識が生まれいく。
馴染みの寿司屋の主人は多くの客の声から店を完全に禁煙にするか迷っているそうで、禁煙になってしまうと、僕の出掛ける店がまたひとつなくなってしまう。癪なので、そのうち僕が煙草の吸える寿司屋を始めてみようかと考えてしまう。
「へい、いらっしゃい!」
「うわ、この寿司屋、煙草臭い!!この時代に禁煙じゃない店があるの?」
「うちは煙草を吸うお客さんのための寿司屋なんでね」
「全く常識のない店だ!さっさと出よう!」
「うちは非常識な寿司屋なんで」
非常識な人間がもっと多くてもいいように思う。
written by ジェイク