What's NEW
ARCHIVE
葬儀の希望は?
2017年11月24日

突然、叔父が亡くなり葬式に出席した。叔父は日頃より健康にかなり気を遣っていたが、急性大動脈解離という恐ろしい病になり急逝したそうだ。叔父は仕事を随分前に辞めていたので、人付き合いはあまり無かったようで会葬客は少なかったが、葬儀会場は広く、祭壇も大きく立派な葬式だった。
叔父の長男で僕の従弟にどうしてこんな盛大な葬式にしたのか尋ねると、父が生きていたら会葬客に対しての失礼がないようにと言うだろうからと、母が盛大な葬儀を行うことを決めたそうだ。そして葬儀の費用を聞いて僕は驚いた。何と普通自動車が1台買える金額だった。葬式にそんなに費用を掛けるのであれば、もっと他に使い道はなかったのだろうか。

戦後の総理大臣となった吉田茂の補佐役だった白洲次郎は、若い頃にイギリス留学の経験があり英語は堪能で、しかも頭脳明晰だった。彼は新たに日本国憲法を作るうえでGHQと幾度も苦しい交渉にあたった男で、戦勝国のアメリカから少しでも有利な条件で日本を独立、復興させるために奮闘した人物だ。天皇の好意に対して失礼な態度をとったマッカーサーを怒鳴りつけるほど、実直な人物だった。そんな彼は晩年、質素倹約に過ごし、常日頃から自分が死んだら金を使う必要はないと家族に話しており、次のような遺言を残したそうだ。

「葬式不要、戒名無用」

葬儀の帰りの車の中で僕は親にこう切り出した。

「葬儀に金を掛けるのは勿体ないし無駄やけん、二人の葬式は派手にせんよ」

母は質素な家族葬で良いと言っていたが、父は違った。

「頼むから俺の葬式はしっかりやってくれよ~!」
「しっかりとした葬式ばしても親父は既にこの世にはおらし出席できんとぜ!それやったら生前葬にしたら?生きているうちに世話になった人ば集めて大宴会したらいいやん!」

そう僕が言うと父は

「生前葬ばして、その後、死んだ時はどうするとや?」
「生きとるうちぬ葬儀しとるけん、死んだら直ぐに火葬場やろ!」
「…」
「親父は葬式を何回もするとね?」

written by キムジー


What's NEW
ARCHIVE